お笑いの劇場では出せない、自分の素を出せる場所【安達周平さん(タチマチ)、村上剛さん(キングブルブリン)インタビュー】
Radiotalkで活躍する音声配信者「ラジオトーカー」を紹介していく連載インタビュー企画。今回は、番組『暖色ラジオ』を配信する安達周平さん(タチマチ)、村上剛(キングブルブリン)さんにフォーカスします。
吉本興業所属のお笑いコンビ「タチマチ」と「キングブルブリン」のボケ同士で配信されている『暖色ラジオ』。安達さんと村上さんはルームシェアをしており、「コロナ禍で会える人が限定されている状態で何かを始められないか」と、2020年5月からRadiotalkでの配信をスタートしました。
一緒にルームシェアをして話を聞いているような、二人の飾らない言葉が魅力的な『暖色ラジオ』。リスナーを「暖色ファミリー」と呼び、近い距離感でトークやライブ配信を通じてコミュニケーションを取れるのは「喜怒哀楽すべてがマジだから」といいます。
(取材・文/ねむみえり)
暖色照明のもとで始まる、ゆるいトーク
ーーRadiotalkを始めようと思ったきっかけは?
安達:コロナ禍で完全に劇場が閉まったときでしたね。キングブルブリンの田中くんもやり始めて、っていうタイミングで、せっかく村上と一緒に住んでたのもあって、僕らもやろうかみたいな感じやったな。
村上:どうせ家でしゃべってるし、じゃあ俺らもRadiotalkやろうか、みたいな感じやったよな。
ーー数ある音声配信のなかでRadiotalkを選んだ決め手は何でしたか?
村上:(収録トークの上限時間である)12分がちょうどいいんですよ。収録時間が無限やったら、無限にしゃべっちゃう。
安達:ちょっと足りんぐらいがいいんですよ。
村上:髪の毛ぼっさぼさでもできるし。
安達:裸で恋愛相談聞いてるときあるもんな(笑)
村上:見た目を気にせんでいいから、ラクなんですよ。顔出しの配信だと、一回ちょっと鏡チェックしてとか、部屋きれいかなとか考えなあかんから。
安達:Radiotalkのライブ配信はほんまラクですね。楽しいし。
ーー「暖色ラジオ」という番組タイトルは、どんな由来から来ていますか?
安達:番組始めたいけど何かタイトルつけな、と思って。トークはリビングで録るだろうし、そのリビングの照明を暖色にしてたから「暖色ラジオ」になったんじゃなかったっけ。
村上:そう。Radiotalkを始めようっていう時期にちょうど、家のリビングの照明を暖色にするかどうか揉めて、大喧嘩の末に暖色にしたんですよ。その暖色の下でやるから、「暖色ラジオ」でいいかって。
安達:語呂もいいし、トークもゆるい感じなんで、ちょうどいいかなって。
ーー初期の頃のトークはお二人の日常のお話が多くて、「今日なんか喋りたいことある?」と、安達さんが村上さんに話を振っていましたね。
村上:確かにはじめの頃は全然おたよりとか来おへんかったから、(トーク)テーマ出してた感じでした。
安達:最初は適当にしゃべってたのが、色んな遊びができだして「プチイラッと」みたいなコーナーになったりとか。今はほんまにおたよりを結構いただけるようになったので。
ーーおたよりやリアクションの手応えはいつごろから感じましたか。
村上:2021年に入ったぐらいじゃないかなと思います。
安達:そんなもんかな。最初は(トークに贈られる)ギフトとか、短いおたよりも一人ずつ読んで「ありがとうございます」って言ってたけど、今年に入ったぐらいに「読みきれへんな」っていう壁にぶち当たって。12分しかないのに時間の半分ぐらいはもらったギフトの紹介に充てる状態になってたので、それをやめて、やっと形が定まってきた感じですね。
ーー番組初期は更新タイミングが不定期でしたが、今は23時に統一されていますよね。そこまでにはどんな経緯が?
安達:寝る前に聴くのもいいし、23時やったらもう寝てる人とかは朝に聴いてもいいし、みたいな感じで23時にしたような……。
村上:多分そうですね。リスナーみんなが全員聴ける時間が23時じゃないかな、ってなったんですよ。最初は19時の案も出たけど、19時は僕らが録るの間に合わへん可能性めっちゃあるなっていうので。
安達:全然飲んでる時間やもんな。
村上:そうそう。だから23時が一番猶予あるなっていう。
安達:あとは予約配信できるようになったのというのが大きくて。俺、新しいものに対しては抵抗感があって、当初は「(機能を使わず)自分で配信ボタン押す」とか言ってたけど、でも今は(予約配信機能)さまさまですね。
村上:予約配信が出たときの革命感はえぐかったなぁ。
二人の空気感をリスナーと共有する
ーー番組では「暖色ファミリー」みんなで一緒に楽しんでいる印象を感じますが、コミュニケーションの面で意識している部分はありますか?
安達:どっちかが攻めたこと言ったときに、もう片方がフォローするというのは大事にしています。村上が言ったら僕やし、僕やったら村上。
村上:イジられてカッとなったリアクションをしちゃうときもあるし、もちろんそれは冗談の延長上なんですけど、そういうときにフォローを入れてバランスをとるのは大事かなと思います。
安達:ガンガン下ネタも言うし。
村上:二人がしゃべっているときの空気感がきちんと伝われば、たぶん何を言ってもリスナーのみんなは「そういうノリだ」って分かってくれるので。
ーーたしかにライブ配信では、お二人の「ガチさ」が漂っています。
安達&村上:ガチ(笑)
ーー喧嘩を繰り広げる回もありますが、これは本当に……?
安達:マジ喧嘩でしたね。
村上:たまにマジ喧嘩があるんですよ。みんなどう思ってはるんやろう。
安達:またやってるわ、みたいな感じで思ってくれてたらええけど。
村上:トークを録る前は仲良かったけど、録り終わったあとに仲が悪くなるとかは全然ありますね。険悪になって、次の日忘れて、またおたよりが来て、思い出して喧嘩になって、みたいな。
モチベーションは自分たちの楽しさとリスナーからの反応
ーートークの配信を続けるモチベーションはどこにありますか?
村上:なにより、楽しいことですね。
安達:ルームシェアして3年も経つと会話がなくなるんですよ。だからこそ、「毎日絶対12分喋る」Radiotalkがあるというのは結構でかいんです。
村上:別に普段から12分ぐらいはしゃべるから、モチベーションを頑張って維持しなくても、収録ボタンを押すか押さへんかの話で。そんなにモチベーションに困ったことはないですね。聴いてほしい話もあるし。
安達:愚痴れるんよな。
村上:みんなにも愚痴れるし、あだっちゃんにも愚痴れるし。さらにそれが番組としても成立するという。
安達:こうして僕らがダラダラしゃべってるのをおもろがってくれてんねや、っていうのはシンプルにモチベーションになってると思います。
ーー話すネタに困ることはないですか?
安達:話すネタがなくならないことは、二人の強みやと思いますね。一人でやってはる人とかはネタ探し大変やと思いますけど、二人でやってたらなんちゃ広がるんで。
村上:ライブで話すほどの話じゃない、しょうもないイラッとしたこととかも言えるから。
安達:Radiotalkで喋って、村上とかリアクションの反応がよかったのを、舞台上でのトークに採用したこともあります。
ーートークのタイトルも毎回秀逸です。
安達:あれは二人で決めてます。2パターンぐらいあって。“フレーズ系”のタイトルのときは、話の中で引きのあるホットワードみたいなのが出れば、「これやろうな」と。“出来事系”のタイトルのときは、話の内容から「見出し」を考えてつけています。
村上:できるだけ「セリフっぽい文体」を意識しています。
ーー思わず聴きに行ってしまうタイトルですよね。さすが、言葉を使って人を笑わせるお仕事だなと思います。
安達:それ聞いたら明日からプレッシャーですね(笑)
村上:「このタイトルだと良くないんかな」と悩んでた時期もありました。
安達:あったよな。
村上:「尊敬する人の特徴はこんなの」とか、「恋愛でやってはいけないこと3選」みたいなタイトルの方がいいのかなと思って、一回変える? みたいな感じになったんです。でも、そんなタイトルつけられる話もしてないから、会話のセリフから引っ張るようになって。結果としてそれがうまくいった感じですね。
ーー23時定期更新にした結果、お二人が23時に合わせて帰るようになったという話も印象的でした。
安達:絶対に帰らなあかんもんな。
村上:絶対に帰らなあかん。22時超えたぐらいから、どっちかおらんかったらそわそわし始めて、「今どこ?」「もう帰るわ」みたいなLINEしてます。だから一日も会わへん日がなくなったかも。
安達:今日の夜は先輩に誘われてるから、お昼録らしてもらっていい?とかはあるんですけど。
Radiotalkのノリがユニットライブでウケた
ーーRadiotalkで配信している芸人さんの中でもとくに長いお二人ですが、1年以上続けられている秘訣のようなものはありますか?
安達:コンビじゃなく、ルームシェアの関係というのがでかいかも。
ーーコンビじゃないからこそ、長く続けられている?
安達&村上:それはめっちゃあると思います。
村上:やっぱりコンビやったら、ライブで上手いこといかんかったりとかしたら、そもそもしゃべりたくない。12分も苦痛やし、多分続いてないかもしれないですね。
安達:でもコロナ禍じゃなかったら、多分コンビでやってたやろな。
村上:ああ、そうかも。やっぱり始めた頃は会える人が限られてたんで。毎日会えてしゃべれる人ってなったら、もうこの二人でやるしかなかったもんな。でも普通にルームシェアのことでめっちゃ揉めた日とかは、マジでしゃべりたくないときあります。
安達:うわ、でも録らな〜って。
村上:ここはプロとして切り替えるか〜って。
安達:そんときちゃんと揉めるし。その熱のままいくから。
村上:相槌全然してないとか。
ーーRadiotalkで配信して、芸人のお仕事に何か影響はありましたか?
安達:まず、ファンの方が増えましたね。
村上:Radiotalkをきっかけに知ってくれて、ライブを見に来てくれる人は増えたましたね。ライブ中のトークの部分も困らんというか。毎日しゃべってるから「あのときの話、使えるな」ってなるし、あだっちゃんと一緒にライブをやるときに、「あ、これからボケるな」というような息のとり方が前より分かるようになりましたね。
安達:キングブルブリンと、ときヲりぴーとと一緒にユニットライブやってるんですけど、ライブ中にRadiotalkでしかやってないノリとかをぶっこんで、めっちゃそれがウケたりするんですよ。みんな聴いてくれてんねや! って。
ーー劇場とRadiotalkがリンクしていますね!
村上:劇場で知ってくれた人はRadiotalkを聴きに来てくれはって、僕たちの普段の感じを知ってもらえる。逆にRadiotalkを聴いてくれてはる人は普段の感じを知って、次に劇場の感じを知ってもらえるという。僕らの両方の姿を知ってもらえる感じで、めっちゃ嬉しいですね。
安達:「なんか起これ」と思って外に出かける回数も増えましたね。「なんか話のネタになるようなこと起これ!」みたいな(笑)
村上:確かに、トークの種を探すためにめっちゃ動くようになったかも知れないですね。一日家でずっとゴロゴロしてることが少なくなったかも。
安達:だってそれを発表せなあかんもんな。今日何もしてないな、とか言いたないもんな。
ーーこれまで配信をしてきて、印象に残っている出来事はありますか。
安達:この間、大阪城公園をマラソンするイベントに参加したんですけど、そこで出会った人がラジオネームで自己紹介してきたときは驚きましたね。あとは、Radiotalkアプリの「おすすめトーク」に載せてもらったときは再生回数が段違いで、やっぱ載るとちゃうんやなー、と驚きました。
村上:確かにそれはあるな。
あと、僕が詐欺にあった話をした回は、劇場の先輩にも「聴いたで」とめっちゃ言われました。僕的にはあれは神回やったかも。
安達:ライブ配信では「プチ自慢大会」が印象的かも。こんなにすごい人らが、こんなに僕らの話を聞いてくれてるんやと思って。
村上:ほんまにみんな優秀な人とか、プチじゃない自慢ばっかりやったよな。
自宅のリビングが「舞台」になる
ーー今後、Radiotalkでやってみたいことはありますか?
安達:公開収録やりたいですね。
村上:公開収録はやりたいな。
安達:「頂上決定戦」みたいな企画を公開収録でやったら、生だからこその面白さが生まれそうな気がします。
村上:コロナ禍じゃなくなったら、公開収録の延長をお酒飲みながらやりたいですね。オフ会みたいなの。
ーーいま、お二人にとって、Radiotalkはどんな存在ですか?
安達:かっこいいこと言ってまいそうやな。
村上:いや、言わざるをおえへん。「リビングを舞台に出来る場所」です。
ーーおお!
村上:これは本当に思っています。
安達:思ったんや。思うのに結構時間かかったな。
村上:いやいや、いつも思ってる感じやなこれは。
安達:個人的には、ファンの人に自分の素をいちばん知ってもらえる場所かなと思いますね。劇場でのライブよりも喋ってるし、自分がどういう人かを見てもらえる。
村上:やっぱ、ラジオってそういう場所やと思いますね。
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