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時空を越えるライター

清水克行さん著『室町ワンダーランド』。
この本のなかにある「百人一首の秘密」という話を読んでいて、ハッとしたことがあった。少し掘ってみようと思う。

この話は、著者が「末の松山」を震災から8年後に訪れた時の話。
「末の松山」とは、宮城県多賀城市にある小さい独立丘陵のことで、この丘を津波が越えることはない、と古くから言い伝えられてきた。

著者は、末の松山を訪れる前までは、”土地の人から、昔話を聞くということは、こちらの道楽に他者を付き合わせる一方的な行い”だと思って、どこか後ろ暗く感じていたそう。

でも、宮城県の人々から「話したい」という強い思いを感じ、さらにこれまでの調査で、楽しそうに接してくれていた人たちを思い出した。

この経験から

ヒトは誰しも本来的に自分の記憶や体験を誰かに伝えたい、遺したいという本能をもっているのかも知れない。”消えゆく記憶”を掘り起こして記録に残す、という僕らの仕事は、そんな人たちの期待に応えるものであるべきだと、あらためて身の引き締まる思いであった。

『室町ワンダーランド』p135

と書いてあった。この部分にハッとしたのだ。

著者は歴史の研究者だ。
私も、卒論を書く時に先生(著者)の本にお世話になったし、卒業した後も著作が大好きなままである。

でも、この気づきは、ライターという仕事にも通じると深く思った。
やっていることが、ライター的な視点でみるとインタビューなのだ。

考えてみれば、

ライターは、現代の人、いま、この時代を生きている人と対話する。
歴史家は、過去に生きた人と対話する。
いずれも、記憶や記録を掘り起こして、文章に残す。

歴史家とライターの仕事がつながった。

私は時空を移動できるライターなのかも?なーんて。

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