見出し画像

お正月の新しい楽しみ方〜しめ飾りの世界は予想以上に深い〜

お正月の準備をすすめている人も多いだろう。
私がお正月にご近所を歩いていて必ずチェックするのが「しめ飾り」だ。
近年は、100円ショップでも買えるし、インテリアとして1年中飾れるようなものもある。

近所のスーパーで売っているしめ飾り

だけど、しめかざりは、地域によって本当に特色がある。しめ縄にくっついている飾りのことを「縁起物」というけれど、その種類もさまざま。
そのバリエーションの豊富さに、私はワクワクしてしまう。

地域によるしめかざりいろいろ

私の住んでいる地域(関西)は、こんな感じのが主流なよう。

ごぼう締めのかたちに、橙(だいだい)と裏白の葉っぱ、稲穂など。
シンプルな形だ。
ちなみに、これについている縁起物の意味は…

・橙…代々繁栄しますように。
・裏白…葉の裏が白いことから、表裏なく清い心や潔白、白髪のイメージや葉の先が枝垂れることから長寿を表す。2枚の葉が対になっていることから夫婦円満や、大群落をつくる生命力から繁栄を表す。
・紙垂(しで)…白いヒラヒラした紙のこと。稲妻の形で、よくないものを遠ざける。
・稲穂…豊作祈願。

こちらは沖縄のしめ縄↓

橙の下の炭に昆布を巻いたものがポイントで、「たん(炭)と喜ぶ」の意味らしい。(ダジャレ?)

「懸の魚(かけのいお)」
兵庫県や香川県などの海沿いに見られるしめかざり↓

しめかざりに魚…⁉︎と思われるかもしれないが、沿岸部で見られるしめかざり。
古くから初漁でとれた魚を神様に供えていたことがルーツになっている。
しめかざりに使われる魚は、鯛のほかに、サケ、フナ、マス、ブリ、イカなど、地域性があるし、魚をつけること自体を省略したものもあるらしい。

1年中飾られる、伊勢地方のしめかざり↓

伊勢地方のしめ縄は、大根のような形に太く綯ったしめ縄に前垂をつけたものがベース。
他の地域ではあまりみない「木札」と裏白やゆずり葉、橙(だいだい)などが飾りとしてつけられている。「木札」には「蘇民将来子孫之門」または「笑門」と書かれる。

「蘇民将来」とは人の名前のことで、以下のような昔話がある。

昔、伊勢神宮に近い、二見浦のそばにある里に「蘇民」と「巨旦(こたん)」という兄弟がいました。
あるとき素戔嗚尊(すさのおのみこと)が伊勢を旅しており、泊まるところを探していました。裕福な巨旦には断られましたが、貧しい蘇民はあたたかくもてなします。

その夜、素戔嗚尊は藁で作った縄で蘇民の家をぐるりと囲みます。翌朝、村には悪い疫病が広がっており、村中で蘇民将来の家だけが助かったのでした。

素戔嗚尊のしめ縄が疫病から蘇民将来を守ったという話から、「蘇民将来子孫家門」と書いた札をしめ縄に下げて、一年中戸口に飾るようになったといいます。

しめかざりはたいていお正月が終わると外されて、どんど焼きなどでお焚き上げされるが、伊勢地方で1年中飾っておくのは、この物語にあやかっており、厄除けなどの意味があるかららしい。

ちなみに「笑門」というのは、蘇民将来の門が短くなって「将門」→だけど、平将門を連想させてしまうから、「笑」にしたんだとか。

そもそもしめ飾りとは?

東海地方に多いしめ飾り

しめ飾りとは、歳神様をお迎えする目印。家のなかが清浄であり、歳神様をお迎えする準備ができたことを表して飾るものだ。

しめ飾りのルーツは、神社や神棚でみられるしめ縄。かつてはお正月の前に、しめ縄を家の周りに張り巡らせて邪気を払い、お正月を迎えていた。これに縁起物がつけられるようになり、現在のしめ飾りのかたちになったのだそう。

だから、大掃除が終わって、家のなかが綺麗になってから、飾るのが一番。
本来は13日から正月の準備がはじまっていたけれど(「正月事始め」という)、現代人はクリスマスもあるしなかなか難しいかもしれない。
(我が家は昨年、大掃除が間に合わず、家のなかがしっちゃかめっちゃかなのに、しめ飾りを先に飾ったことは内緒…)

しめ飾りは願いが見えるタイムカプセル?

しめかざりはとにかく多様。
宝船、鶴亀、うちでの小槌、宝珠、眼鏡、はさみ、海老、俵などなど…。形もさまざまで、縁起物もさまざま。
中には作り方が複雑すぎて、世界に1人しか作れないしめ縄もあるとか。

長年伝えられてきたしめ飾りは、形にも縁起物にもひとつひとつに意味がある。
ふだん私たちは、しめ飾りの意味を考えることは、あまりないかもしれない。
だけど、よくよく見てみると、しめ飾りは、昔の人たちが込めていた願いが、現代にもそのまま残っているタイムカプセルみたいだなと思う。

あなたの地域のしめ飾りはどんな形で、どんな飾りがついていますか?

しめ飾りといえばこの本

私の説明では1%くらいしかしめ飾りの魅力が伝わっていない気がするが、少しでも興味を持った方は、この本を読んでほしい。
私的には完全保存版の一冊です。

森須磨子さん著『しめかざり』



いいなと思ったら応援しよう!