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COPDと摂食嚥下障害

11月15〜16日に名古屋国際会議場で第34回日本呼吸ケア・リハビリテーション学会学術大会が開催されます。毎年「COPDと摂食嚥下障害」をテーマに発表させていただいていますが、今年もポスター発表予定です。
言語聴覚士が関わる必要のある重要な疾患だと思いますので、研究成果を報告してきたいと思います。
今回は大まかに「COPDと摂食嚥下障害」についてまとめたものを皆さんと共有していきたいと思います。

COPD患者の嚥下障害とリハビリテーション医療のポイント

COPD(慢性閉塞性肺疾患)は、長期的な有害物質の吸入、主にタバコ煙によって引き起こされる肺の炎症性疾患です。高齢化が進むにつれてCOPDの患者数も増加し、肺だけでなく全身にさまざまな影響を与える全身性疾患と考えられています。今回はCOPDと嚥下障害の関係、治療のアプローチについてまとめてみました。

COPD患者における嚥下障害の実態

COPDの患者さんの中には、嚥下障害を訴える方が多く見受けられます。研究では、COPD患者の約70%が主観的な嚥下困難を経験し、50%以上が有意な嚥下障害を示したという報告もあります。具体的には、肺過膨張によって輪状咽頭筋の弛緩が起き、喉頭挙上が不十分になることで嚥下機能が低下します。この結果、誤嚥性肺炎や栄養障害など、患者さんの予後に深く関わる合併症のリスクが高まります。

サルコペニアによる嚥下障害と評価

高齢のCOPD患者さんでは、サルコペニアが嚥下障害に寄与しているケースが少なくありません。サルコペニアは筋力や筋量の減少を伴い、嚥下筋の機能低下を引き起こすことがあります。具体的な評価方法として、筋力(握力や舌圧)の測定や筋量の評価が用いられています。これにより、嚥下筋のサルコペニアが疑われる患者さんには嚥下筋力トレーニングを実施し、リハビリテーションを進めていくことが重要です。

COPD患者に対するリハビリテーションの重要性

呼吸リハビリテーションはCOPD患者さんの健康関連QOL(生活の質)の向上や運動耐容能の改善に有効です。具体的には、以下の方法が推奨されています:

  • 運動療法:全身の筋力を高めるトレーニングを中心に、持久力や関節の可動域を広げる運動を行います。

  • 嚥下リハビリテーション:嚥下機能の改善を目指し、頭部挙上訓練や嚥下体操を実施します。

  • 栄養管理:高エネルギー・高蛋白食の摂取を基本とし、分岐鎖アミノ酸(BCAA)や必要なミネラルの補給を行います。

複合的アプローチが鍵

嚥下障害のリハビリテーションは、医師や看護師、言語聴覚士、栄養士など、多職種による統合的なアプローチが不可欠です。嚥下カンファレンスで患者さんの摂食状況を確認し、必要に応じて治療方針を調整することが重要です。特にCOPD患者さんでは誤嚥性肺炎の予防が生命予後の向上に直結するため、早期からの積極的な対策が求められます。

最後に

COPD患者さんにとって、嚥下障害は誤嚥性肺炎や栄養障害と密接に関連しており、適切なリハビリテーションが必要です。多因子が絡み合う嚥下障害に対しては、栄養や筋力だけでなく、呼吸と嚥下の協調性も含めた包括的なアプローチが鍵となります。予防こそが最良の治療であり、早期からの介入が患者さんの生活の質を向上させるポイントです。

COPD患者さんやそのご家族が安心して過ごせるように、リハビリテーション医療の最新知識を共有していきます!

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