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「メジャスピでMLBの選手をより知れた気がした。でも本当にそうか?」— 野球ゲームにおける能力がもたらす功罪を考える

1. メジャスピをやって感じたこと

最近、『メジャスピ』(MLB版プロスピ)をプレイしていて、今まで詳しく知らなかったMLBの選手たちの特徴を知ることができた気がした。

大谷翔平と知ってはいたけどイマイチ理解が浅かった選手の1例(B・レイノルズとJ・インディア)

「この選手はミートが上手い感じなんや」「このピッチャーはコントロールが良くてカーブがいいのか」など、わかりやすく視覚的に表示された能力を見ることで、その選手のプレースタイルが一目でイメージできる。

もちろん、これはMLBにさらに深く興味を持つきっかけにもなっていると思う。
しかし、ふと立ち止まって考えた。
「本当に自分はその選手のことを理解したのか?」
数値だけを見て、その選手の実力を正しく把握したと言えるのだろうか?

この疑問を解消するために、今回は野球ゲームの「数値化された選手評価」が、野球観にどのような影響を与えているのか?
そして、セイバーメトリクス的な視点から見た場合、ゲームの評価基準はどこまでリアルに近づいているのか?
これらについて深掘りしてみたい。

2. 野球ゲームの数値化がもたらした「功」

実況パワフルプロ野球(パワプロ)やプロ野球スピリッツ(プロスピ)、そしてメジャスピのような野球ゲームは、選手の能力を数値やランク(A~Gなど)で視覚的に表現している。
これにより、野球に詳しくない人でも、選手の特徴を直感的に理解できるようになった。

① 選手の特徴が直感的にわかる

例えば、

ヤバいときの柳田
  • ミートA / パワーS → 高打率&長打力がある打者

  • コントロールA / 球速160km → 制球が良くて速球派のピッチャー

  • 守備力S / 肩力S → 守備が固い選手

こうした表記があるだけで、「どの選手がどんなタイプか」がすぐに把握できる。

② 野球に詳しくない人でも入りやすくなる

野球はルールも戦術も複雑なスポーツだが、パワプロやプロスピのようなゲームを通じて「能力が可視化」されることで、初心者でも興味を持ちやすくなる。
実際、「ゲームがきっかけでプロ野球を観るようになった」という人も少なくないだろう。

③ 選手の成長や変化が数値で追える

シリーズを通じて選手の能力の変遷を見ていくと、

  • 若手選手が成長し、能力値が向上する

  • ベテラン選手が衰えていく

といった変化が分かりやすく、リアルな野球の「選手の移り変わり」も楽しめる。

某ゲームでの大谷翔平の成長

3. 野球ゲームの数値化が生んだ「罪」

一方で、選手をゲームのように数値化することにはデメリットもある。

① 「ゲームの数値だけで選手を評価する」風潮の強まり

ゲームの影響で、選手を「能力値だけで判断」する傾向が見られることも少なくない。

これは対右被打率が.249、対左被打率が.266対左Gが付いた2018広島ジョンソン

例えば、リアルの試合では

  • 守備のポジショニング
    ⇒簡易のポジショニングはゲームにもあるが

  • 選球眼やカウント別の打撃
    ⇒『選球眼』や『三振』などの特殊能力である程度表現されているものの…

  • 相手投手との相性
    ⇒『〇〇キラー』程度

など、数値では表しにくい要素がプレーに大きく影響する。
しかし、ゲームでは数値がすべてなので、「この選手は能力値が低いから大したことない」と思われがち。

実際には、

  • OPSが低くても、チームに貢献する役割を果たしている選手

  • 数字には表れにくい「勝負強さ」を持っている選手

などもいるが、ゲームではその価値が反映されにくい。

② ゲームと現実の乖離

例えば、ゲームの能力値が現実と食い違っていると、ファンの間で「この評価は過大/過小だ」と論争が起こることもある。
また、「なぜこの選手のミートがBなのに、実際の打率は.320もあるのか?」といった疑問も生まれやすい。

オーペナで毎回.300打ってしまう2018オリックス中島宏之

③ 野球の戦術や駆け引きが軽視される

ゲームでは、

  • 能力値の高い選手を集めれば勝てる

  • 戦術や相手チームの分析より、選手の強さがすべて

という思考になりがち。
しかし、現実の野球では「戦略」「チームワーク」「采配」が試合の勝敗を大きく左右することもある。
そのため、ゲームの影響で「野球の奥深さが伝わりにくくなる」という面もある。

4. セイバーメトリクスの視点から考える

セイバーメトリクスでは、「従来の主観的な評価」ではなく、データに基づいた選手評価を重視する。

スポナビより

① 「(パワプロなどの)数値評価は主観的では?」

  • ゲームの能力値は開発者の主観が入る

  • WARやwOBAなどの客観的データを使った方が正確

② 「むしろ数値化はポジティブな進化では?」

  • 昔ながらの「印象評価」より、数値を基にした方が客観的

  • ただし、ゲームの評価方法がセイバーメトリクスほど精密ではない

③ 「戦術軽視は時代遅れ?」

  • 送りバントなどの小技は、データ上は「損な戦術」

  • ゲームの影響で「効率の良い戦術」に注目が集まるのはむしろ良い変化

ネットでは大谷翔平並の人気を誇る「送りバント期待値」くん

5. 結論

例えばこんな感じ?The Showが最もそれに近いかもね
  • 野球ゲームの数値化は、野球を広めるのに大きく貢献している

  • しかし、「数値だけがすべて」という思考が広まりすぎると、野球の奥深さを見落とすリスクもある

  • セイバーメトリクスの視点を取り入れれば、より客観的な選手評価が可能になる

  • 今後の野球ゲームは、よりリアルなデータを反映することで、現実の野球との乖離を減らしていけると、さらに面白い野球ゲームになっていくだろう

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マーカス・鷺ヌーマン
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