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日常小説

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#日常小説

そういうところなんですよ先輩

「お前って仕事できないけど周りに好かれてるよな」

人差し指で、気怠そうにぼちぼちとキーボードを打ちながら、痩せ気味の中年男性がボヤく。彼のメガネは右に少し傾いていて、いつも親指の付け根あたりで修正をかける。でも、直しても直しても直らないのが見ていてもどかしい。

「逆に先輩は仕事できるのに何かアレですよね」

残っている仕事を少しずつ終わらせる。資料を「最近のもの」「前のもの」で分類

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受け継いだ感情を新しい家族に。

《お前なんてもうしらない》

【激情】
1 はげしく怒ること。また、その怒り

冬至、凍てつく寒さが心を芯まで冷やす。近場の公園では色とりどりの帽子を被った子どもたちが走り回っている。まるで、晴れた日に舞降る流星のよう。

《どうしてそんなことするんだ?そんな子に育てた覚えはない》

【哀情】
1 心が痛んで泣けてくるような気持ち

2 嘆いても嘆ききれぬ思い

公園の近く

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先輩、頑張りすぎです(女性編)

「私の大学時代の先輩の話なんだけど」
「いつもの英雄のD子さんですか?」

仕事も終わり、これからアフター6というOLの少ない夜の自由時間。外へ飛び出す前にいつもこの化粧室に集まる。どのオフィスも同じだと思うが、男性と女性で化粧室は別けられている。男性禁制の空間は、女性が本性を現す場所と化す。そこはまるで、満月の夜に映し出される狼の如く、LEDライトで照らし出されたモンスターウーマンとでもいうべき

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「もし超能力を1つだけ与えられるとしたら君は何がほしい?」

「もし超能力を1つだけ与えられるとしたら君は何がほしい?」

週中の水曜日、深夜2時。うちのビルはその界隈でも言わずと知れた眠らないビル。どこよりも遅くまで明かりが点いている。もしかしたら、このビルが建ってから電気が消えてたことはないんじゃないかという噂もある。

「起きた瞬間フェイスケア、決めてあったメイクになる力が欲しいです」
「・・・・・・ずいぶんと現実的というか生々しいスキルだね」

ビル

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