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秘書にサポートされる人のことを何と呼ぶか問題

自分の夫や妻のことを「主人」「家内」「旦那」「女房」と呼ぶのに抵抗を覚える人が、「夫」「妻」と呼ぶのは世に定着した。しかし、他人の夫や妻をどう呼ぶかは相変わらず難しい。上下・主従関係のニュアンスがあるワードを避けたい人は、「お連れ合い」「パートナーの方」と呼んだり、面識があるなら「鈴木さん」「花子さん」と名前で呼んだりと、工夫を凝らしている。「夫さん」「妻さん」というニューウェーブも出てきたが、なかなか万人が自然に使えるワードは定着していないようだ。

これと類似した、秘書・アシスタントにサポートされる人のことを何と呼ぶか問題。「主人」と同様に上下・主従関係のニュアンスがある「上司」「ボス」と呼ぶのが適切でない場合に、何と呼んだら良いのだろうか。そもそも、ある人が秘書に業務の指示は出すものの、指揮系統(レポート関係)は別にある場合は、その人は秘書の上司ではない。私の職場では、弁護士は秘書に仕事を依頼するが、秘書たちへの監督責任があるのは、秘書部門マネジャーの私である。同様に直接の雇用関係にはなかったり、事務局長や総務部長が実際の上司であるケースは多い。

先日、私が呼びかけて「秘書・事務局・アシスタントのつどい」を開催した。集まったのは省庁・企業・宣教団体・学校法人などの秘書・事務局スタッフの7名。TVドラマのような「七人の秘書」がそれぞれの仕事場で感じていることを自由に話し3時間あっという間に経ってしまった(秘書あるある)。そこでこの「秘書・アシスタントにサポートされる人のことを何と呼ぶか問題」を相談してみた。

まず、職場内では〇〇社長、〇〇部長、〇〇大使など肩書で呼ぶのが自然。教師・牧師・弁護士などは、〇〇先生でいける。そうでなくても普通に仕事をする相手なら〇〇さん、でもよいだろう。 また、社外の仕事相手に対しては「〇〇が」と肩書・敬称なしで言及するのがビジネスマナーの教科書どおりである。
しかし、それ以外の人に対して、自分がサポートする相手と自分との関係性を示す呼称が難しい。「私の秘書」「私のアシスタント」というのに対応するようなワードがない。友達や家族に仕事の話をするときに、「私の社長」「私の先生」というのはあまりにも不自然である。

私が秘書との働き方について講演する際には、秘書と働く人を何と呼べばいいか考えた末、「本人」というワードを使っている。選挙の街宣活動をする候補者が「本人」というタスキをかけているのにインスピレーションを受けたのだが、話は通じやすい。

さて「七人の秘書」と話しているうちに、「ユーザー」はどうか、という意見が出た。なるほど!秘書が提供するサービスを利用するのだからユーザー。ユーザーさん、とても自然である。日本語にすると利用者さん?おや、それは介護業界で定着したワードではないか。では介護業界からヒントを得られるのでは。
介助者/被介助者のように「被〇〇」でしっくりくるワードはないか。メンター、メンティーのように「ee」を末尾につけるのはどうか。サポーター、サポーティー? 
(帰宅して夫に話すと、そこまでいったらもう「お客さん」でいいんじゃない?と言われて笑った。)

当日のディスカッションでは結論は出なかったので、介護業界の「利用者さん」のような新しいワードを引き続き考えたい。
しかし、その後の秘書たちのおしゃべりや、LINEグループでのやり取りでは、「私のユーザーさんが」と皆が言うようになった。秘書どうしではこれで決まりかもしれない。

後日、ChatGPTに事情を説明して相談したら、それは「利用者」でしょう、と答えてくれた。七人の秘書と結論は同じだ。また、英語で良いワードが無いかとググってみたら"Beneficiary"というワードが提案された。受益者。私の心情的にはとても近いが、これで通じる日が来るだろうか。
single word requests - What do you call someone who is supported? - English Language & Usage Stack Exchange

ちなみに、上司ではないにも関わらず、秘書を自分の部下だと思って接する人は、秘書との人間関係でトラブルを起こしやすいです。ご注意ください。

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