ドラマ評 オヨビでない奴!
小松政男の訃報に接して、「見ごろ!食べごろ!笑いごろ」の世代はリアルタイムではない自分としては、親分もこの作品が印象に残っている。最近ユーチューブでこのドラマの動画を見る機会があって、改めて面白かった。内容としては、いわゆる便利屋を営む3世代の親子(祖父植木等、父所ジョージ、息子高橋良明)が主軸のコメディーで、主人公は高橋で、転校先の中学校でさまざまな騒動を巻き起こすというストーリー。小松は教頭役、高橋の担任役は田中美佐子。高橋が何かやらかそうとすると、教頭役の小松が抑え込もうとし、田中がさり気なく高橋をアシストするという展開が基本だった。見ていた当時は中学生だったが、部活やら塾やらで時間が限られていたなかで、単純に楽しめるドラマだった。水曜の夜にTBSで流していて、裏番組はドラゴンボールだったが、自分は断然こちらだった。
この親子の名前が「風間3父子」。これは当時、フジで放送されていた「スケバン刑事III」の「風間3姉妹」(浅香唯、大西結花、中村由真)を意識したネーミングで、ドラマでは当時はやっていたゴーストバスターズの格好をして、仕事に向かうシーンや、同じ局で放送していた別のドラマの現場に行ったりと、今から振り返ると70年代にTBSで放映されていた「ムー一族」のようなコメディテイストの流れをくむような印象だった。これだけ面白く見ていた作品だったが、個人的には最近知ったことが2つある。1つはこの作品の脚本が遊川和彦だったことだ。「家政婦のミタ」や、最近では「35歳の少女」と、今の作風とは結びつかないのだが、遊川は「ADブギ」なども手掛けていて、実は「オヨビでない奴!」は彼にとって、連続テレビドラマの初作品だった。ただいわゆる「規制概念」を壊そうとするようなスタンスは当時から変わっていないのだな、と感じた。もう1点は、小松が植木の付き人から芸能人をスタートしていた点だ。もともとはセールスマンだった小松は、ネタやフレーズを街で見かけた人の発言や様子などがつかむことが多かったと以前テレビで話していた。「オヨビでない奴!」も、肩ひじを張らない内容で、出ているキャラクターも普段の世界に人たちで、そこにコメディーを盛り込ませたところが良かった。
内容としては、非常の楽しく願わくば続編や特別企画も期待したかったが、主役の高橋良明は放映翌年の89年にバイク事故で急逝した。なかなか良いキャラクターだっただけに残念。