メディア評 売り文句としての公正中立
枝野幸男が先の国会で行った演説の内容をまとめた本が、扶桑社が出版されるとのこと。これを受けて、産経新聞と同じグループの扶桑社が、野党の党首の本を出すことで、いわゆる「左右軸」に則り、あれこれと語る言説が一部で見られている。扶桑社といえば、あの新しい歴史教科書を世に送り出したかと思えば、最近過去の犯罪疑惑が浮上している菅野完の「日本会議の研究」といった「反安倍」的なスタンスの本も出している。
方や、朝日新聞系のメディアも、「NOと言える日本」を出したころには、石原慎太郎が、朝日ジャーナルでは、昔は新右翼の活動家だった鈴木邦男がそれぞれ寄稿したりしていた。メディアにとって、あまり左右の差はないのではないか、というのが個人的な印象だ。もちろん、建前的には左右のカラーはあるけれども、実際には左右に関係なく、売りたいのが本音だ。
小生がいまは亡き編集系の専門学校に通っていたとき、若者向け雑誌の編集などで業界では知られた講師が語った言葉が忘れられない。新聞やテレビが掲げる「公正中立」とは、所詮は右にも左にも売りたいのが本音。出版社が売れないのに文芸誌を出すのは、「文化」という建前があるからで、本当はもっと売れることしか頭にはないと。おそらく、これがすべてだろう。正直、売れてくれるのが一番メディアには良く、ただそれだとあまりにも露骨なので、「公正中立」を掲げているにすぎないのだ。商業メディアに、「左右軸」を持ち込むのは、あまり有効性を持たないかな、というのが個人的な印象だ。