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最大の転売対策はサービス向上

コロナ禍から舞台関係では、中止のリスクが当たり前となった。最初の1年は熱心に買い支えようとしていたファンも、最近ではいい加減に興行側の態度に違和感を募らせている。
そこで何故そうなってしまうのか、考えてみようと思う。

新型コロナウィルスの特性上仕方ないとは思うが中止はギリギリで発表されることが多く、チケットは返金されても交通費や宿泊費は当然帰ってこない。
観光地は、これもコロナの影響で事前の予約が必須の場所も増えている。いきなり予定が空いてしまっても、特に出来ることもないパターンが多い。
多くの人にとっては、休みも貴重で有限だ。
時間とお金を捨てるも同然の状態となっている。

その一方で、リセールが弱いまま転売対策を強化している。
最近は宝塚を中心にミュージカル観劇が中心だが、元々使いづらく手数料が高いと言われていた公式リセールのチケトレも、更に改悪されますます利用者が減りそうになっている。
ホテルやレストラン等は基本的にキャンセル出来、直近でなければ満額返金される。
しかし舞台のチケットは何ヵ月も前に、複数の候補日を出して取ったチケットでもキャンセル不可だ。家族や友人に譲ることも出来なくなっている。

そもそも、何故舞台のチケットは客に厳しいのか。
それはチケットを買う相手が「お客様」というより「お友達」だからである。

舞台のチケットは公式サイトやプレイガイドの「一般チケット」と、ファンクラブ等の「個人チケット」に分けられる。
個人に割り当てられるチケットは集客力を示すバロメーター、次の仕事に繋がる要素の大部分となる。そのためファンがついていない段階では知人、友人を呼び寄せる。場合によってはお金も取らず、招待という形を取る。
単純に売れない場合、事務所のスクールや練習生を招待したり、関連企業にバラまくのも普通である。

席がガラガラというのは演者のテンションにも関わり、作品の質も下げる。同じ売れないでも、見た目には席が埋まってるのといないのでは、作品の評価にも影響する。
サクラと言えばそれまでだが、客席の大半が一般的に想像されるような「客」ではない舞台は多い。

つまり商業サービスを利用というよりは、「仕事の一環」や「友人との約束」としての客層が主流なのである。そう考えると、よっぽどのことがない限りキャンセル不可は自然に感じる。代わりも難しい。コロナの恐れがあった場合、かかる予定の金額は払って謝罪するのが一般的かと思う。
舞台というのは多かれ少なかれ、このような立場の人々が席を埋めて成り立っている。

これを商業化したのが推し活だ。
自分が客として楽しむよりも、推しや贔屓の顔を潰さず、人気のアピールを目的とする。
「この演者のために来ました」と売り込む使命感があり、業務のような意識のため多少の厳しい扱いでも追いかけ続ける。
SNSのフォロワー数は、同じように無料か、在宅で使用出来るものであれば比例する面もあるかと思う。但し先に述べた通り、サクラでも座っていて欲しいのが舞台である。客の支払いというのは、金額だけではなく「マナー良く席を埋める」という行為も含まれている。
それなりに費用も労力もかかる観劇チケットの捌きとなると、ファンクラブ実績ほど説得力のある指標はない。

宝塚では個人ファンクラブは非公式だが、だからこそより密な個人名義のチケットとして扱われる。ファンクラブでチケットが捌けるというのは、退団後に来る仕事にも影響する。
そもそも身元が明確なため、一般チケットと比べれば転売が入りにくいように思う。
ファンクラブで捌ける量を増やすためにリセールを充実させたり、融通を効かせるのも戦略の1つであろう。逆に仕事量を調整するのに、そこまで頑張りたくないパターンもあるのかもしれない。
何にせよ、個人チケットは各ファンクラブの裁量次第なので、運営とファンが納得していれば良い。

その代わり、一般チケットはレストランやホテル等と同じ、「お客様」扱いも必要ではないか。
もちろん一般的なチケットであれば「演者が変わっても同じ作品や劇団なら観る」というアピールになるので、公式に購入することは全て推し活といえる。
しかし気楽な娯楽、サービスを受けるただの客として観劇をしたいニーズは確実にある。

レストランも急なキャンセルは問題になったので、客のハードルが厳しくなっているのも時代の流れかもしれない。
それにしても高額転売が問題になり、コロナ禍になり、と時間はかなり過ぎているにも関わらず、マスクやオンラインの進化と比べるとリセールの進みが悪すぎる。
後退していると言ってもいい。

確かにリセールは興行側に旨味はない。しかし席を埋めたいという意識が明確にあるにも関わらず、リセールにここまで消極的なのは「お友達」の個人チケット頼りが強すぎる現れにも思う。
興行側に都合が良すぎる客が基準となるため、一般で普通に購入している層に対しても
罰則ばかりに意識がいき、サービス向上をおざなりにしている。

もし公式リセールで当日にも出品の可能性があるとなるば、わざわざ高額転売に手を出そうとする客は激減するように思う。
今は不便過ぎて出品が少ないが、便利になればなるほど出品も増える。特に今後は感染症対策が緩和され、感染者自体は激増するであろう。「ちょっと体調が悪いから出品」を可能にすることは、舞台そのものを守ることにもなる。

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