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【掌編小説】 ぬのこ


ひとり
ぼーっと空を眺めてみる

雲の形が龍や鳳凰に見えて
美しい

知らないうちに
涙がつーって
流れていた

何の感情なのか
自分でもよくわからない

数週間前に
彼と別れた

わたしから切り出したのに
なぜ
こんなにもやもやしてるのか
やになっちゃうな
本当

1年半くらいの付き合いだから
さほど長いとは
いえないかもしれないけど
やっぱり
ダメージは大きいみたい

仲良く手を繋いで歩く
カップルを
見ていると
羨ましくなる

わたしたちは
付き合ってた頃も

外で歩く時は
少し離れて歩いてた

狭い街だから
人目が気になるからって
いつもマスクしてたし

はっきり
手を繋ぐことを
拒否された訳じゃないけど

わたしから
手を差し出しては
いけないような気がしてた

歩くペースも
違うから
合わせるのに
必死だったけど

そんな事
多分
気づいてくれてなかったろうな

2人だけの時は
寄り添ってくれたけど

なんだか少し
寂しい気持ちだった

不倫でもないのに
どうして?

わたしは
隠されなきゃいけない
存在なの?

10歳の歳の差が
そうさせたのだろうか

自分より
若い年代の女と
一緒のとこを
知り合いに
見られるのが
照れ臭いのか

わたしには
理解できない
感情だ

別れを
切り出した時は

思っても
見なかったという
驚きの表情だった

でも
理由を
聞いてくることもなく

一言
『わかった』
だけ

これまでの
2人の時間は
何だったというのか

少しくらい
抵抗してくれたっていいのに

カッコ悪いから?

それとも
わたしがいなくても
どうってことないってこと?

なんで
わたしの方が
こんな惨めな気持ちに
なるんだろう


どれくらい
この場所に
いたのだろう

気がつくと
空がうっすら赤くなってきた

雲は
さっきとは
まったく違う
パンや果物の形に見える

そうだ
変わらないものなんて
ないのだ

わたしの心も

彼の心も

くっついたり

離れたり

いろんな

人や

物に

ぶつかりながら

形を変えて

また動き出す

進んでるのか

遠ざかってるのかすら

わからないけど

今のわたしを
精一杯
生きていくしか
ないのだろう

なんか
吹っ切れた
気がしてる

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