どろり遊泳
雑音ばかりが聞こえている。
イヤホンをすると、日常の音が音楽の一部になる。
白い砂の上をただ、歩いていくように。
私は何も考えずに、人生を辿っていく。
幸せなくせに、幸せなせいで、また少しずつ不幸の中にのめり込んでしまう。
怠惰、惰性、安定
退屈だと言うには、忙しすぎるし、満たされていると言うには、足りないものが多すぎる。
ふと、目を閉じる。
幼き日に見た悪夢は、今も色褪せることなく、走り回る。
そこでは、私は全くの無力で、全てはシナリオ通りに進める他にはない。
不可抗力だ。くだらない。
目が冷めたって、何一つとして始まった感じがしなくて、みぞおちのあたりで黄色の濁った液体がふつふつと煮立っている。
「僕ら人間は、一つのミスで人生をだめにすることができるし、百個のミスでも堂々と生きることができる」
空の瓶からそう聞こえた気がした。
寝ている間に誰かが布団をかけてくれていた時のような、情けのような優しさが私の体を包んだ。
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