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COUPLE
二組のカップル
私の目の前には、二組のカップルがいた。
どちらもよく似た雰囲気のするカップルだ。
相違点を上げるとすれば、髪が明るいか暗いか、その位の差しかなかった。
私は食堂にいた。もちろんカップルもだ。
食堂には、よくわからないヘビーメタルがBGMとしてかかっていた。
食器のぶつかる音も、他の人の会話の声も、全ては食堂という一つのアルバムの中の曲のようだった。
私の正面にいる方のカップル(以降、茶髪と呼ぶ)は、どちらもスマホをイジっていて、会話が少なかった。
もう片方、つまりは私の左斜前方にいるカップル(以降、黒髪)は、男の方がスマホをイジっていて、彼女の方は何やら話しかけている様子だった。
もちろん、黒髪の彼氏の方は反応を示している。それは、水面に小石が落ちたときのような、小さく短い頷きであった。
黒髪の彼氏は、声が小さく何を話しているかよく聞き取れなかった。
私は、二組を眺めながら一人で食事をした。食堂のBGMは流行りのJ-POPに変わっていた。
幸せとはなんだろうか。ふと、そんなことが頭をよぎった。
二組のカップルはどちらも幸せそうだ。少なくとも私にはそう見えた。
茶髪の方は、順応している感じがあって、安定感が強く、黒髪は自転車の練習をしているときのような不安定さはあるものの、その感情の揺れは茶髪と比較しても大きいと思われる。
恋愛のことについて考える時、安定を求める人と、変化であったり激動を求める人がいる。
その真ん中を歩んでいければいいのだけれど、そこに到達するまでには、大きくそして、何度も左右に揺さぶられるような体験が必要な気がしている。
二組のカップルはこれから、どのような道を辿るのだろうか。
私は白米を頬張りながら、ぼんやりとそんなことを考えていた。