【AI vs eスポーツプレーヤー】すでに始まっていた戦いの歴史
「StarCraft2」がプレーできるAI「Alpha Star」
12/18にGRAND FINALが行われた「ESL StarCraft2 Masters Winter 2023」。
憧れの世界的eスポーツチーム「Team Liquid」所属、21歳のフランス人プレーヤー・Clem選手が優勝した。
今年のeスポーツ競技シーンを締めくくるにふさわしい世界チャンピオンを称え、Xでは祝福のポストで溢れた。
この「StarCraft2」というゲーム。
実は、AIと切っても切れない関係にあるゲームなのだ。
早速BingAIを使って、「StarCraft2」について調べてみる。
今回もリサーチでよく使う「より厳密に」のモードを使用。
「StarCraft2」は将棋やチェスとは異なり、リアルタイムで「資源集め」→「ユニット生産・強化」→「相手を打ち破る」を行うゲームである。
この「StarCraft2」をプレーするAIを開発したのが、Google傘下のAI研究開発企業「Google DeepMind」である。
テクノロジー系メディア「WIRED」によると、以下の通り。
なんとAIが「StarCraft2」で人間を圧勝したというのだ。
これは、2019年、4年前の出来事である。
Team Liquidの世界的プレーヤーを撃破した「Alpha Star」
これは、「Star Craft2」をプレーするAI開発者のツイート。
彼らが開発したのが「Alpha Star」というAIプログラムである。
この「Alpha Star」と対戦したのが、Team LiquidのMaNa選手。
世界大会優勝経験もある、ベテランeスポーツ選手である。
ブログにはディープラーニングの技術的な内容が詳細に書き記されている。
AlphaStar: Mastering the real-time strategy game StarCraft II
正直、「内容が難しい」&「英語」ということで、全文読むのに半日かかってしまった。
まだまだちゃんと理解しきれていない部分も多いので、年末年始、休暇期間の宿題としたい。
ただ、開発する上で大きな課題となっていたのは5つあり、様々なゲーム、特にMOBAの分野における戦術分析のヒントになりそうだ、ということは理解できた。
その課題は以下の通り。
ゲーム理論(単一の最適な戦略が存在しない)
不完全な情報(敵の配置などの情報取得は「偵察」が必要)
長期計画(ゲームの初期段階で講じたアクションが効果を表すのに時間がかかる)
リアルタイム(それぞれのプレーヤーのターンが交互ではない)
大規模なアクションスペース(自分の手駒を配置できる場所が約10の26乗という広さに)
こうした課題を「ブレイクスルー」するため、チームは「TPU」という、Googleが独自開発した強力なコンピューターチップを16個使った。
そして実現した、各エージェント最大200年間分という想像を絶する膨大なプレー体験。
AIの強さというのは、とにかく学習するデータ数がけた外れに多いということだ。
京大人工知能研究会KaiRAのメンバーも、ゲームリザルト画像の情報抽出システムを新たに組む場合、画像は100万枚は必要と話していた。
この情報量の多さが、人知を超えた、一見奇抜にも見える戦術を生み出す理由なのだ。
「OpenAI」もゲームをプレーするAIを作っていた
生成AIブームの生みの親「OpenAI」も、実は大人気MOBAゲームをプレーするAIを作っていた。
DOTA2は、世界一高額な賞金金額を誇る大会「The International」のゲームタイトル。
(参照:ESPORTS CHARTS)
「OpenAI Five」がプロゲーマーに勝利したのは2019年と、「Alpha Star」が世界最高峰の選手を撃破したのと同じ年である。
コロナ禍でeスポーツブームが日本にやってくる前から、海外では「AIとeスポーツのコラボ」がすでに始まっていたことになる。
(参照:『Dota 2』AIチームがプロゲーマーに勝利ー公式世界大会に出場する可能性も)
紙面をにぎわす「Google」「OpenAI」「Team Liquid」などのビッグネームが先取りしていたのかと思うと、正直頭が上がらない。
膨大なデータから生成される何万パターンもの戦術を、敵対するチームの傾向に合わせてピックアップするという頭脳戦。
そんな戦い方がeスポーツの土壌でできたなら、勝率がぐんと上がり、しかも「安定する」と考えている。
AIをeスポーツの競技シーンに導入したいと考える大きな理由は、これである。
こうした人知を超えた挑戦をeスポーツチームが組織的に行うことで、熾烈化する生存競争に打ち勝てる希望が見いだせると思うのだ。
今回「AI×ゲーム」の先鋭的な取り組みの中で、「Team Liquid」の名前が出てきた瞬間、「やっぱり…」となった。
eスポーツチーム運営の模範を示す超ブランドチーム。
私がeスポーツの世界に居続ける限り、ずっと強い憧れを抱き続けながら、背中を追い続けるチームだと再確認した。