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ハタチ①

20歳になった1月25日、
自分の確固たる意思で山口県にいた。


家にいたらきっと家族が祝ってくれたから一人山口にいてごめん、とは思う。


20歳になったからといって何か変わったかと聞かれれば「特に何も」と答えるだろう。20代の仲間入りをするなんてもっともっと先の未来だと思っていたから10代の自分はもう過去だと思うと不思議な感覚に陥る。
「もう20年生きたんだ。」というのが正直な感覚だ。
思いを馳せればしんどかった記憶の方が浮かんでくる。かと言って消したい記憶では無い、
「自分が今の自分である、あれる理由」だと思うから。

寄り道をしながら歩いた20年、
20回目の誕生日にいる場所として選んだのは山口県。

大好きな写真作家さんの写真展と
写真詩集の刊行記念イベントの会場である。

元々フッ軽と言われる人間だが、誕生日で無くても行きたいのだから誕生日に行かない理由が無かった。
あとは時間との勝負のみ。大学の先生に授業の終わる予定時間を聞いて「行けるぞ」となったわたしから行かない選択肢はもう存在していなかった。

24日の授業が終わり、新幹線に飛び乗り4時間。
ずっとワクワクが止まらなかった。
お弁当を買って新幹線の中で食べたのにホテル近くのラーメン屋さんに行ってしまうくらいには浮き足立ってた。

美羽さんとは素敵なご縁で去年の4月にもお会いしていたから久しぶりに、また会えるのが楽しみだった。写真と対話が物凄く幸せであたたかい空間だったから今回のイベントも素敵なものになるだろうと思っていた。

そして25日朝、目覚めたら4時すぎだった。
部屋の窓から見える月が綺麗だった。
二度寝したら少し寝すぎた。
窓から差し込む朝の光が綺麗だった。

起きて朝食を食べて身支度、1時間に1本しかない宇部線を乗り過ごす訳にはいかなかった。
なんとか無事に電車に乗って揺られること1時間弱。
目的の琴芝駅に到着。
会場である工夫舎までは僅か1、2分だったから時間になるまで近くを散歩することにした。

川の方に導かれるまま歩いてみると小さな公園があった。ブランコに乗ろうかと思ったら足を捻ったからやめておいた。

ブランコ、滑り台、そして隣にあったベンチに座ろうとしたら猫が水を飲んでいるのに気が付いた。
プラスチックのお皿には水が入ってたし歪だがさくら耳に見えたから地域猫だろう。刺激して逃げられるのは悲しいからそっとベンチに座った。
猫ちゃんは水を飲むのを止めて少し歩き、横になっていた何かの看板の上に座った。
カタンと傾いたから座り心地は悪そうだ。
かと思ったらまた動いてわたしが座っていたベンチの橋に乗ってきてくれた。
目を開けては閉じを繰り返すから一緒ににひなたぼっこをすることにした。


ぼーっとしていたら工夫舎に向かわないといけない時間になったから最後に猫ちゃんに手を伸ばしたら擦り寄ってきてくれて少し離れ難かった。

小さな喜びを胸に閉まって太陽の光が差し込む道を一歩一歩踏みしめて工夫舎に向かう。
どんな出会いがあるだろうかと思いながら。

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