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脳は力学を理解している?

みなさん、こんにちは。

今回は、「脳は力学を理解している?」と題して、体の重力に対する反応についてお話しします。

みなさんは、机の上に座って両手を胸に当てて前屈みにすると
自分の意志とは関係なく膝関節が屈曲する現象、なぜかわかりますか?

開始肢位


前屈み


こんなことを考えるきっかけは、私が実習指導者になって間もない頃、
「この現象は、身体を丸めて回転しやすくして、落ちたときに頭を守るため」と聞いたからです。

その時、私は
「そんなことはない。落ちているときならまだしも、落ちる前から落ちることを前提に、それも落ちやすくするような体の反応はない。
それより落ちないための作用ではないか?」と思ったからです。

そう思ったのは
日々の臨床の中で患者さんが転ばない、転倒しない反応

特に、高齢者で認知症が伴うとそれが強く現れると感じる現象を見て

「長い年月をかけて、身体は重力に対応する手法をいろいろ獲得してきたんだなー。そして、それは脳の中で大きなウエイト占めるんだな~。」
と思うようになったからです。


そこで、講義を受けた帰りの電車の中で、ひたすら考えていました。

自身で行なってみても、確かに意志とは関係なく、膝関節は曲がりますし、それどころか催眠術にかかったように膝関節を伸ばすことができません。

そこで、前に転げ落ちないためとした場合

そこには転げ落ちないための力を作り出す必要があります。

それは床反力です。

では、どのように床反力を作り出しているかと言うと

転げ落ちそうになったとき、机と下肢が最も接触するのは大腿遠位です。

ここで床反力を生み出すには、大腿を机に押しつける力、すなわち股関節伸展の力が必要です。


股関節伸展作用の大きな筋には、大殿筋、ハムストリングス、大内転筋があります。

この時、体は前屈みで股関節は屈曲するので、腸骨に付着する大殿筋は伸張されます。

すると、筋収縮を行なうアクチンとミオシンの接触が減り、十分な股関節伸展を発揮できません。

山﨑 敦 著:PT・OTビジュアルテキスト(専門基礎)運動学 より引用


その点、ハムストリングスは付着が坐骨結節なので、骨盤前傾でも大きな伸張の影響を受けません。
また、膝関節が屈曲できるので筋の長さを調節できます。

以上から、股関節の伸展の力を生み出す作用が、結果的に膝関節を屈曲させる現象を作りました。

その証拠に、前屈みを大きくすると、その分、膝関節屈曲が大きくなります。

これは、股関節伸展による床反力を強めるための作用の結果です。

患者さんを捉える  -寝たきり上下肢屈曲位の症例-
のアプローチは、その点に気をつける必要があります。


以上から、動作や歩行等の状態の分析には、直接見えない部分の中身を考えることも必要になることがあります。

その場合、重力への対応(床反力など)を考慮すると、理解しやすくなります。


転がらないための反応についてお話ししましたが

ここで、高所から落ちる人の映像などを目にすることがあります。

この時、丸まって頭を守っている人は見たことがありません。

そのことから脳は、力学的な力が作用できるときに、それを理解して対応しているのではないかと考えてしまいます。

筋の中で重力と密接に関わる筋は下腿三頭筋です。

教科書的にも、正常成人の立位で作用する筋は下腿三頭筋と言われています。

中村隆一 他 著:基礎運動学 第6版 補訂 より引用


下肢の術後などで、しばらく免荷になる場合があります。

この時、下腿三頭筋の萎縮を減らすために座位や臥位で足関節底屈運動を実施します。

その後、全荷重が可能になってから歩行で下腿三頭筋が生かされていないことを目にします。

そして、立位などの抗重力位で筋トレを実施しますが、なかなか力がつかず、歩行に生かされるのに時間がかかります。

これは、下腿三頭筋が重力と深く関わっていることを思わせる内容です。

重力を感知するレセプターでもあるのではないか?と考えてしまいます。


最後までお読み頂きましてありがとうございます。





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