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手をついて立ち上がると手に痛みが生じる症例

以下に記す症例について、見方、知識の使い方、考え方の流れが参考になれば幸いです。

情報)
2週間前から手をついて立ち上がると右手にズキンとした痛みが生じる。
利き手は右であるが、外傷等の原因となる心当たりはない。


痛みの部位は手関節を背屈させると手首の出っ張る場所で、おそらく有頭骨の結節部と考える。



特徴として、背屈時に手指を伸展すると痛むが屈曲させると痛まない。

痛みが起こらない手関節背屈肢位


Q) ここから考えられることは?

A) 指の屈伸と絡むのは、(PIP,PIPの屈曲から)深指屈筋腱である。

深指屈筋腱は有頭骨の掌側を走行しており、痛みの部位の位置から可能性がある。


Q) 深指屈筋腱と有頭骨の痛みの関係は?

A) 腱と骨の圧迫が考えられるが、腱が骨に近づきというよりも、骨が腱に近づくと考えた方が自然である。

そこで、母指内転筋斜頭が有頭骨の掌側に付着していることから、有頭骨の偏位が起こるかを母指内転筋斜頭の収縮で確かめた。

母指内転筋斜頭の収縮


Q) 結果は?

A) 痛みが増した。

よって、有頭骨の掌側偏位による深指屈筋腱への圧迫痛の可能性が高くなった。

Q) アプローチは?

A) 有頭骨の掌側偏位の押さえ込みとして撓側手根屈筋がある。

この腱によって菱形骨の掌側偏位が押さえられ、間接的に有頭骨が押さえられる。


Q) 方法は?

A) 撓側手根屈筋の収縮であるが、深指屈筋の収縮を抑えるために橈屈を主に行う。休憩を含めて5分間ほど実施した。


Q) 結果は?

A) 痛みは減少した。

Q) 何故、このような症状が出現したのか?

A) 有頭骨は掌側では、骨を固定するよう放射状に靱帯が伸びる。


そのため、有頭骨は運動軸となり、本来はあまり動かない。


ここで、症例は関節が緩い体質である。

また、受験があり、何ヶ月もペンを握っていた。

それによる内転筋斜頭の収縮の繰り返しから、有頭骨の掌側偏位が生じ易くなったことが考えられる。


最後までお読み頂きましてありがとうございます。

引用文献)
・林 典雄 他著:運動器疾患の機能解剖に基づく評価と解釈 上肢編   運動と医学の出版社
・山﨑 敦 著:PT・OTビジュアルテキスト(専門基礎)運動学  羊土社
・工藤慎太郎 編集 :運動器疾患のなぜ?がわかる臨床解剖学  医学書院
・市橋則明 他 著:身体運動学 関節の制御機構と筋機能  MEDICAL VIEW








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