歩行で下腿に痛みが生じる症例
以下に記す症例について、見方、知識の使い方、考え方の流れが参考になれば幸いです。
情報)
仕事中に小走りをした後、右下腿外側に痛みが出現した。
その後、歩行時に痛みが出るようになった。
部位は右下腿1/2よりやや遠位外側で、痛みは引っ張られるような痛みで圧痛もある。
Q) 原因は?
A) 触診では左に比べて硬い。
部位は表層で腓腹筋外側頭の筋腱移行部のやや上方である。
腓腹筋の微細損傷の可能性があるので評価で確認する。
Q) 評価法と結果は?
A) 膝関節伸展位の足関節背屈で痛みが増幅し、屈曲位で減少するば、腓腹筋の可能性が高い。
結果は、膝関節伸展位で痛みがなく、屈曲位で痛みが出現した。
Q) どう解釈すればいいか?
A) 短関節筋の足関節背屈で伸張する筋を調べてみた。
• 後脛骨筋の収縮(底屈・内がえし)、後脛骨筋の伸張(背屈・外がえし)
• 長母指屈筋の収縮(底屈・内がえし・母指屈曲)、伸張(背屈・外がえし・母指伸展)
• 腓骨筋の収縮(底屈・外がえし)、伸張(背屈・内がえし)
いずれも痛みなし
そこで、再度状態を観察した。
Q) どうか?
A) 痛みがある方が背屈角度が大きい。
膝関節屈曲位では腓腹筋は緩むが、損傷によりヒラメ筋と腓腹筋の局所の滑走が低下したとしたら、背屈角度の増加によるヒラメ筋の伸張が局所の腓腹筋の伸張を起こすのでは?
Q) 圧痛以外に、局所の腓腹筋であることを示す評価は?
A) 歩行で腓腹筋を優位に使用するToe inと、使用が少ないToe outで歩行を実施してみる。
Q) 結果は?
A) Toe inで痛みが強く出現した。
そこから腓腹筋の局所の癒着や微細損傷の可能性がある。
Q) アプローチは?
A) 歩行時に腓腹筋の負荷を減らす。
Q) それは?
A) 腓腹筋の活動が高い時期は立脚終期である。
Q) 理由は?
A) 距骨下関節回外作用による前足部剛性を高め、効率よく蹴り出しさせる。
Q) 腓腹筋の収縮を減らすには?
A) 前足部剛性を別の作用に置き代える。
Q) それは?
A) ウインドラス機構である。
ここで、内側縦アーチは、足底腱膜を伸張させる。
Q) 他に足底腱膜を伸張させるものは?
A) 足底腱膜停止部に付着する筋群である。
足底腱膜と基節骨付着筋:母指外転筋、短母指屈筋、母指内転筋、小趾外転筋
これら筋群は立脚後期で働く。
また、立脚後期で虫様筋や骨間筋も働いているが
足底腱膜の視点から考えると、虫様筋は足底腱膜を補助する足底固有筋群である長趾屈筋につながり
骨間筋は、趾背腱膜を介して深横中足靱帯の緊張を高め、虫様筋の機能を上げる。
Q) アプローチ法は?
A) 各筋に対する運動を5分間実施した。
Q) 結果は?
A) 歩行時痛は、EX前を10とすると5に低下した。
最後までお読み頂きましてありがとうございます。