立ち上がりについて
こんにちは、理学療法士のおかむーです。
今回は、立ち上がりについてお話しします。
教書などでは、立ち上がりはまず、体幹を前傾させて重心を支持期底面に乗せることからスタートすると書かれています。
立ち上がりは身体を上方に移動させる動作です。
身体を上方に移動させるのは下肢の作用なので、利に適っています。
その後、股関節伸展筋、膝関節伸展筋の作用で立ち上がります。
その後、立ち上がり途中で、重心が前方に行くので、そこでバランスをとるために下腿三頭筋が働きます。
また、体幹が前傾すると股関節伸展筋が大きく働き、前傾が少ないと大腿四頭筋が大きく働きます。
この負荷量は、重心と作用する関節の距離で決まります。
重心から関節までの距離が長いほど、その関節を動かす筋に負荷がかかります。
ここで、立ち上がりで必要な3関節(股関節、膝関節、足関節)で、1関節が動き、他が動かない、また、重心を足底支持期底面に乗せるを無視して
足が床についている条件では
端座位において
股関節を動かすと、体幹が前傾、後傾しますが、身体を上方に移動させる動きがありません。
足関節も同様で、足関節の底背屈で下腿は上に動きますが、身体は上がりません。
膝関節では、足が床についている状態で膝関節を伸展させていくと、身体を持ち上げていきます。
そう、立ち上がりに重要なのは、大腿四頭筋です。
ですので、高齢者などの下肢に力がない方が平行棒から立ち上がるとき、体幹の後傾位や平行棒の引っ張りで離殿を行ないます。
これは、上肢の使用(上腕二頭筋、大胸筋など)や体幹後傾(腹直筋など)を使い、筋連結を利用して大腿四頭筋の収縮を促通しようとする現れです。
そして、膝関節屈曲40度ほどになると、膝関節角度はそのままで、平行棒をたぐり寄せるように立ち上がります。
この膝関節40度ほどの屈曲位は、大腿四頭筋が最もパワーを発揮する肢位です。
そこから、大腿四頭筋が弱いことがわかります。
それでは、股関節伸展筋の役割は? と言うと
体幹を前傾させて、重心を足底支持期底面に落とし、離殿後に体幹を起こすのに使われます。
まとめると
立ち上がりの下肢筋活動の目的
股関節伸展筋:重心を支持期底面に乗せる、体幹を起こす。
大腿四頭筋:身体を上方に持ち上げる。
下腿三頭筋:前方重心への対応する。
以上を踏まえると、離殿が臨床で苦慮するのは
この時が重心と膝関節の位置が最も遠くなるので、大腿四頭筋が必要になるからです。
大腿四頭筋と言っても、股関節が屈曲しているので、主は広筋群です。
大腿四頭筋の筋力があるのに立ち上がれない(離殿ができない)場合は
・重心が足底支持基底面に乗せられない
股関節屈曲可動域制限
体幹前傾位で保持でない:股関節伸展筋の低下、脊柱起立筋の低下
・過度の円背:
これも重心を支持基底面まで持って行く距離が足りなくなります。
そのため、何とか重心を足底支持期底面に乗せようと、体幹の前傾を強め ます。
すると、大腿直筋の短縮が大きくなります。
円背は高齢者が多く、広筋群は低下しています。
よって、大腿直筋に頼らざるを得ませんが、大腿直筋の短縮で収縮力は低 下しますので、立ち上がれません。
そこで、両上肢を膝の上に置き、両肘関節を伸展させることで体幹を起こし、股関節の屈曲角度を減らし、大腿直筋が活動しやすくさせて、円背を減らすことで、重心を足底支持期底面に乗せます。
ただ、円背の方で、体幹を前傾させて立ち上がる姿は、あまり見たことがありません。
前傾を行なわず、椅子や車椅子のアームレストで上肢を強く使用して立つ場合が多い印象です。
これも、大腿四頭筋の低下から起こる現象です。
理由は、そのような方でも、座位で体幹の前傾が行えるからです。
・下腿の前傾が起こらない:足関節背屈可動域の低下
・下腿三頭筋の低下で、その後の下肢による体重支持で、下腿前傾位を維持できないことを予見して立てない。
・離殿での大腿四頭筋の過活動により、下腿あるいは股関節の偏位が起こり、関節が不安定になるので力が出せない。
これは、その時に痛みが起きることで、大腿四頭筋が活動できないこともあります。
などが考えられます。
最後までお読み頂きましてありがとうございます。