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患者さんを捉える  -体幹伸展・後傾や長距離歩行で腰痛が出現する症例 前半-

以下に記す症例について、見方、知識の使い方、考え方の流れが参考になれば幸いです。

情報)
20代の男性。体幹を伸展・後傾させると腰椎中頃に痛みが生じる。痛みは深層部にズキンとした痛みである。

また、長い距離を歩いていると、体幹伸展・後傾時と同じ部位に同様の痛みが生じてくる。

但し、下肢への痺れや放散痛はない。

痛みが生じる肢位


痛み部位
母指で示すあたり


診断名は腰椎すべり症である。
既往で、小学生の時にオスグット-シュラッター病と診断される。
整骨院ではオスグットによって腰椎すべりが生じたと言われた。

Q) どのように考えていけばよいか?

A) 歩行を見る前に、腰部のどのようなストレスで痛みが生じるか調べる。
その後、腰部ストレス結果をヒントに歩容を見る

でないと、歩行の何を見ればよいかわからない。

Q) 腰部の何が原因か?

A) 痛みは局所であり、下肢への放散痛や痺れはないので、神経への絞扼による問題(ヘルニア、椎間孔の狭窄など)はない。

診断名がすべり症なので、体幹伸展・後傾によって局所椎体の前方すべりが結合組織への伸張ストレスや棘突起間の圧迫が起きた可能性がある。

Q) 本当にすべりによる問題か?

A) 体幹を伸展・後傾させたときの痛みの部位に窪みが出来ていたので可能性は高い。

痛み部位
母指で示すあたり


体幹後傾・伸展
痛みがある示指で示す部分に凹みができる。


ここで、窪みが出来た上下の脊柱を見ると前弯が少ない。

Q) それが?

A) 腰椎伸展・後傾時、すべりがある腰椎のみで体幹を伸展・後傾させている。

また、腰椎伸展は骨盤前傾で起こる。

Q) 症例は?

A) 骨盤前傾が大きい。

Q) 原因は?

A) 骨盤前傾は股関節屈曲筋の緊張等による短縮で起こる。

Q) 症例は?

A) 大腿直筋の短縮が確認された。

この短縮は、触診とエンドフィールから線維萎縮の短縮と筋緊張による短縮の混合であった。

Q) アプローチは?

A) すべりと過可動を押さえる。

Q) 方法は?

A) 
① ROMとして他の腰椎の伸展可動域を作り出し、すべり椎体の動きを分散する。

→ ロールタオルを動きの少ない上部腰椎に当て、寝てもらう。
(下部腰椎は起立筋群が厚く、また、すべりの椎体にも近いので、すべり椎体を固定するのが難しい)

矢印はロールタオル
注意:痛みがない範囲

② すべりのある椎体を筋緊張で押さえる。
これは、触診で、椎体を押せる筋の緊張が低いことが確認された。

→ 椎体の前方に位置する大腰筋、胸腰筋膜に付着する腹横筋や内腹斜筋の収縮を促す。

AnneM,Gilroy 他著、坂井 建雄監訳、市村浩一郎 他訳:プロメテウス解剖学コアアトラス第2版より引用

背臥位、あるいは座位で骨盤を後傾しながら両股関節を軽く屈曲させる。
そのとき、息を軽く吐いて、下腹部に軽く力を入れる。
この時、力を強くいれたり、強く息を吐くと、腹直筋や外腹斜筋の収縮がメインになってしまう。

意外と難しいので、最初は、セラピストが目的筋が収縮しているか触診で確かめる

インナーマッスルは動作の初動に発動し、関節の動的安定化を図るものなので、すべて軽く行なう

③ 大腿直筋の伸張性を高める。

→ 腹臥位で膝関節屈曲自動運動による相反抑制を利用し、大腿直筋の緊張を下げた。


Q) なぜ、この方法にしたのか?

A) 大腿直筋のストレッチングは腰椎の前弯を招きやすいからである。
また、見学者の勉強のためでもある。
そして、歩行と絡めると、これでもよいと考えた。

Q) 結果は?

A) 伸展・後傾可動域が拡大し、痛みが減少した。



もちろん、1回のアプローチでは筋の活動維持は望めない。
日々のEXで、それが身につく。
終了は、痛みの消失がしばらく続いたらである。

Q) 歩行との関係は?

A) 後半に続く。


最後までお読み頂きましてありがとうございます。


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