#194 紙が人工芝に!?マイクロプラスチック問題解決の糸口
『紙について楽しく学ぶラジオ/Rethink Paper Project』
このラジオは、「紙の歴史やニュースなどを楽しく学んで、これからの紙の価値を考えていこう」という番組です。
この番組は、清水紙工(株)の清水聡がお送りします。
よろしくお願いします。
紙が人工芝に!?
はい、皆さんこんにちは、こんばんは。
いかがお過ごしでしょうか。
今日は、先日の日本経済新聞で気になる記事を発見しましたので、そちらを取り上げたいと思います。
日本経済新聞より2024年10月10日の記事です。
テーマは、「人工芝は紙製 王子ファイバーがマイクロプラ汚染対策」。
そう、紙で人工芝を作りました!と言う記事です。
紙から人工芝・・・。
なかなか想像できないですよね。
僕も記事のタイトルを見たときに全く想像がつきませんでした。
という訳で、記事の内容を解説していきたいと思います。
マイクロプラスチック問題
まず記事は、王子ファイバーと言う会社が、近年環境問題として取り上げられることが多くなってきた「マイクロプラスチック」問題の対策に乗り出した、という感じの文章から始まります。
マイクロプラスチックは皆さんもよくご存知かと思いますが、長時間で摩耗したプラスチックの粒のことで、これが河川や川に流れ出ることで、生態系や人間の健康に悪影響を及ぼしている、これが問題になっているんですよね。
経済協力開発機構(OECD)の2022年の発表によると、2019年には世界で年間2200万トンのプラスチックが海や陸上などに流出しているとのことです。
そして、世界自然保護基金(WWF)の資料によると、クレジットカード1枚分に相当する約5グラムのマイクロプラが世界の人々の口に毎週入っている可能性があるとのことです。
皆さん、毎週5gずつマイクロプラスチックを摂取している可能性があるようです。
可能性とは言え、ちょっと嫌ですよね。
さて、そんなマイクロプラスチックですが、どこから排出しているのでしょう。
ピリカと言う会社の調査によると、質量でみると、人工芝が25.3%を占めて最多だったようです。
そう、マイクロプラスチックの主な発生源は、ペットボトルでもレジ袋でもなく、なんと人工芝だったんです。意外ですよね。
当然、人工芝への規制は進んでいるようで、EUでは、マイクロプラスチックを含む人工芝の販売を2031年以降禁止するようです。
紙糸の技術を応用
さて、そんなマイクロプラスチック問題に立ち向かうべく、王子ファイバーはマイクロプラスチック最大の発生源である人工芝に挑みます。
この王子ファイバーと言う会社は、ざっくり言うと紙糸を作っている会社です。
そう、紙糸を応用して人工芝にしたわけです。
凄い発想ですね。
既に家庭やオフィスのラグでの引き合いはあるようです。
今後は屋外での使用を目標にしているようです。
引張強度は問題ないようですが、スポーツに耐えられるだけの摩擦強度に改善の必要があるみたいです。
販売開始は2025年度、3年ほどで年間10億円規模の売上高が目標とのことです。
実は進んでいる日本の人工芝
さあ、こんな感じで、人工芝のマイクロプラスチック問題の対策が進んでいるのですが、この分野、実は日本が進んでいるようです。
例えば、住友ゴム工業は、人工芝の施設にマイクロプラスチック流出防止システムを作ったり、ミズノは、人工芝にマイクロプラスチックが流出しずらい特殊加工を施したりしています。
調査会社のグローバルインフォメーションによると、人工芝の世界市場が30年には23年比で63%増の57億8千万ドル(約8500億円)に達すると予測されています。
紙の人工芝の上でスポーツがされている、そんな将来が来ると面白いですね。
はい、という訳で今回は、紙の人工芝について解説してきました。いかがだったでしょうか。
それでは、本日も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。