vol.8_印刷技術の誕生
こんにちは!"RETHINK PAPER PROJECT"のシミズサトシです。
本日もご覧いただき、ありがとうございます。
さて、前回は、印刷技術についての導入のお話でした。
印刷技術の登場によって、紙の、メディアとしての価値は大きく高まっていきます。
印刷ができるようになることで、単純に、紙に記録するスピードが早くなるので、より多くの人に、紙に書かれた情報を届けることができるようになります。
そして、当時の知識人や思想家などが、紙と印刷という、当時最強のテクノロジーを使っていくことによって、社会が大きく変わっていきます。
今回は、印刷技術の誕生の経緯をご説明いたします。
よろしくお願いいたします。
■中国四大発明の印刷
印刷が誕生したのは、7世紀後半、もしくはもう少し早い時期と言われています。場所は、中国です。最初は、木版印刷から始まります。
中国すごいですよね。紙と印刷は、人類コミュニケーション史の上で間違いなくトップクラスの発明です。その2つを中国人が発明したんです。
現在も中国は、ITやクリーンエネルギーなどの分野で最先端を行っていますが、テクノロジーを取り入れるのがとても上手ですね。
では、なぜ中国で印刷技術が発明されたのか。
それは、仏教で印刷の需要があったからなんです。
紙の発明の回でも、同じような話が出てきたと思います。
そう、写経です。経典を書き写すことで功徳が積めるとされているからなんです。
これまでは、当たり前ですが、全て手で書き写す必要がありました。
しかし、印刷技術が出てきたことによって、経典を量産できるようになります。圧倒的なスピードで功徳が積めてしまいます。
当時の中国の仏教徒の気持ちは、こんな感じだったことでしょう。
「めちゃくちゃ功徳積みたい。けど、時間もないし、ずっと手で書いていたら疲れる。何かいい方法はないだろうか。」
からの印刷技術開発!こんな感じです。
素晴らしいテクノロジーは、往々にして人間の余暇を作るものです。
車は、人間の移動速度を早くしました。
インターネットは、人間の移動を必要としなくしました。
そして印刷は、人間が書く手間を省きました。
当時の仏教徒の「書く手間を省きたい」という、圧倒的需要によって、印刷技術が生まれたのです。
イスラム教徒は『コーラン』を暗記するし、キリスト教徒はそもそも『聖書』を読む人が少なかった。
つまり、イスラム教徒もキリスト教徒も、仏教徒ほど、印刷に対する需要がなかったんです。
だからこそ、仏教の地で印刷技術が生まれた。
面白いですよね。
■印刷を形にした日本
さて、中国で生まれた木版印刷ですが、それを最初に形にしたのは、日本人です。
女帝である称徳天皇が政権の座にあった時のことです。
735年、天然痘が日本を襲います。
称徳天皇は、何とかしてこの天然痘を抑えたいと思い、111名の僧侶を集めます。
当時は、当然医学は発達していませんから、呪術などで病気を直すということが一般的な考え方でした。
僧侶たちが出した解決策は、こうです。
まず、高さ13cmほどの木造の三重の塔を100万基作ります。100万です。
そして、その塔の中に経本『陀羅尼(だらに)』を1巻ずつ奉納します。
この塔を、10箇所の寺に並べる。これが、僧侶たちの答えです。
当時の最高峰の僧侶たちが出した解決策だから間違いないでしょう。
しかし、100万基です。
当時は、文字を書き写せる人は少なかったでしょうから、100万巻の経本を書き写していたら、まず途方もない時間がかかるし、手首が腱鞘炎になる人が続出していたことでしょう。
ここに名案を出す人物が現れます。
吉備真備さん。彼は称徳天皇の師であり、中国で木版印刷を見てきた人物です。
彼が、経本を「木版で印刷しちゃおうよ」という、当時では超最先端の発言をします。
現在でいうと、「音声認識ソフトで文字起こししちゃいましょうよ」的な感じですかね。
そして、その名案を実行し、見事に100万巻の経本を刷り終えます。
この印刷を担当した人物は、当時最大級の功徳を積んだことでしょう。
そして、5年の月日を要し、ようやく770年に100万基の三重の塔が完成します。
■活版印刷の発明
さて、木版印刷も大きなイノベーションですが、実際に社会を大きく変えた印刷技術は、「活版印刷」です。
活版印刷の発明家として最も有名な人物は、恐らくヨハネス・グーテンベルクでしょう。
彼が活版印刷を発明したのは、15世紀のことです。
しかし実は、彼は、活版印刷の最初の発明家ではありません。
活版印刷とは、1文字毎に版を用意し、その版を自由に組み替えて印刷するというものです。
ちなみに、現在でも活版印刷は使われています。コットン紙などの柔らかい紙に印刷すると、独特の風合いの凹凸ができて、めちゃくちゃカッコよく仕上がります。
活版印刷が最初に発明されたのは11世紀のことです。
中国の畢昇(ひっしょう)さんが発明したとされています。
彼は、活版印刷の発明家であり、間違いなく偉人なのですが、庶民であったため、名前以外の情報が全く残っていません。
■活版印刷が生み出した文字
後に世の中を大きく変えるきっかけとなった活版印刷術ですが、実は、中国では、それほど多用されませんでした。
なぜか。
理由は色々ありますが、一番大きな理由は、文字体系にあると思われます。
活版印刷は、1文字毎に版を用意しなくてはいけません。
中国で使われていた漢字で活版印刷を行うためには、途方もない数の版を用意しなくてはいけません。
しかも、1ページに同じ文字が複数回出てくることを考えると、1文字あたり1つの版で足りるとは限りません。
そう、活版印刷自体は、とてもいい技術だったんですが、漢字との相性が非常に悪かったんです。
このテクノロジーの波にうまく乗った人たちがいます。
朝鮮人です。彼らは活版印刷が発明されると、それまでの中国伝来の文字体系を捨て、24文字から成る新たな文字体系を開発します。
現在は「ハングル文字」と呼ばれていますが、文字体系を切り替えてから現在に至るまで、ずっと24文字のまま続いています。
余談ですが、パソコンで文字を打っていると、英語と日本語のフォントの数の違いに悲しくなることはありませんか?
これも、文字体系の影響が大きいでしょう。
日本人は、漢字のみならず、平仮名、カタカナという複数の文字を使いこなす、類稀なる民族です。
一方の英語は、26文字のアルファベットで構成されています。
この文字数の違いが、フォントの数の違いに影響を与えていることは間違いありません。
はい、今回は、印刷技術の誕生のお話でした。
紙の誕生の時と同じく、仏教との相性がめちゃくちゃ良かったんですね。
そしてなんと言っても、中国すごい、この一言に尽きます。
さて、次回は、ヨーロッパに場所が移ります。
活版印刷の発明家、ヨハネス・グーテンベルクが登場します。
次回もお楽しみに!
それでは、本日はこの辺で失礼いたします。最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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