『稲盛和夫一日一言』 2月3日
こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 2月3日(土)は、「従業員のために」です。
ポイント:経営者は、企業に集う全従業員の幸福を考えなければならない。経営者とは、懸命に働いてくれている従業員を路頭に迷わせることのないよう、先頭に立って努力している人のこと。
2022年発刊の『経営のこころ 会社を伸ばすリーダーシップ』(稲盛和夫述 稲盛ライブラリー編 PHP研究所)「お互いに感謝し合い、誠を尽くし合う」の項で、京セラにおける経営理念の実践について、稲盛名誉会長は次のように述べられています。
京セラでは、経営理念を「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること」と定めていますが、それを実現するための、経営の手段というものも明確にしています。
第一は、「お客様に喜ばれる製品(心のこもった製品)、並びに誠意あふれるサービス、すなわちよい製品をより安く供給し、また常に新技術開発に努め、すぐれた新製品を供給することにより、商売を円滑に進め、適正な利益を得ること」です。
私はよく、心のこもった製品、真心が入った製品と言うのですが、本当に真心を込めてつくったものと、そうでないものは一発で分かります。一生懸命いいものをつくり、安く売ることによって、お客様も喜んでくださる。その結果、我々には適正な利潤が残るわけです。
そして第二に、「社内においては、お互いに感謝報恩の心を持ち、お互いに誠を尽くし、心と心で信じ合うその心をもとにして、対立のない、お互いに助け合う大家族主義で運営する」としています。
ここに「感謝報恩の心」という言葉があります。これは、今こうして生きていることを、心からありがたいと感謝できる心です。感謝ができる人でなければなりません。
感謝する心は非常に大事なものです。お互いが信じ合える仲間で、お互いに感謝し合い、お互いに誠を尽くし合っている。そのような関係であれば、仲間のためならどんな苦労でもしてあげようという気が起こっています。
社内にあっては、社長である私が「それぞれの責任を全うしてくれる素晴らしい従業員のために、どのような苦労もいとわない」と思う。
従業員は従業員で、「こんないい社長のためだったら、自分も難儀はいとわない」と思う。お互いさまとは、お互いがそのようにつき合っていく生き様のことです。そこには対立もありません。それを口で言うのではなく、実行することで証明していくのです。
京セラの経営理念を実現していくための手段というのは、どこにでも書いてある簡単なことです。当たり前のことです。しかし、それを哲学にまで高めて、実行している集団はなかなかありません。哲学にまでアウフヘーベン(止揚)し、向上させ、実践に移している集団だから、奇跡的といわれるほどの成功につながったのです。(要約)
今日の一言では、「経営者が『自分の会社を立派にしたい』という純粋で美しい願望を持って先頭に立って努力していけば、長いスパンで見れば、その努力は必ず報われていく」と説かれています。
2012年発刊の『京セラものづくりの心得を語る』(伊藤謙介著 京セラ経営研究部編/非売品)の中で、リーダーの立つべき位置について、伊藤元京セラ会長は次のように述べられています。
皆さんは、組織においてリーダーはどのような位置にあると考えておられるでしょうか。
「組織を図で描いてみてください」と言われると、ピラミッドのような三角形を描き、リーダーをその頂点の位置に置く場合が多いのではないでしょうか。しかし私は、そこが大きな間違いではないかと思っています。
そのような固定観念があるがために、リーダーが私利私欲をむき出しにして、自分勝手な行動をとることになるのです。それが現在、社会のあちこちで頻発している不祥事の根本原因ではないかと思うのです。
本来、組織というのは逆ピラミッドの形をしていて、組織をリードする立場にあるリーダーはその一番下に位置していなければならない、と私は思っています。そこで誰よりも汗をかき、苦労する。
つまり、リーダーが底辺にいて、その組織を支えていかなければならない立場にあると考えるべきなのです。そう考えることが、組織を活性化させ、不祥事をも一掃させるに違いありません。
組織においては、汗をかく覚悟のない者がリーダーを目指してはならないし、また苦労をいやがるような者をリーダーに選んではならないのです。
こうした考え方は、組織のリーダーだけにとどまらず、会社自体の存在についても言えることではないでしょうか。
お客様、取引先、株主、地域社会などで構成されている逆三角形の社会の中で、自分の会社が一番下に位置していて、会社を取り巻くすべての存在のために懸命に貢献していこうと努力する。
経営者はもちろん、すべての従業員が、そうした逆三角形の構造を脳裏に描き、誰にも負けない努力で働き続けるならば、会社はさらに成長発展を遂げていくに違いありません。(要約)
組織を率いるリーダーにとって、この「逆三角形の底で組織を支えるのは自分」という意識は決して忘れてはならないものではないでしょうか。
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