『稲盛和夫一日一言』 10月12日
こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 10月12日(木)は、「高い目的を持つ」です。
ポイント:事業の目的は、人間として最も崇高な願望に基づいたものでなければならない。素晴らしい目的を持っていれば、恐れや罪悪を感じることなく、エネルギーのレベルを最大限に上げることができる。
2022年発刊の『経営12ヵ条 経営者として貫くべきこと』(稲盛和夫著 日経BP/日本経済新聞出版)の中で、「なぜ会社を経営するための目的が必要なのか?」として、稲盛名誉会長は次のように述べられています。
同族経営を行う中小企業のトップと従業員の関係は、概ね次のようなものではないでしょうか。
二代目、三代目社長にしてみれば、たまたま自分の父親や親族が社長だったから後継者としての役割が回ってきただけで、特に優秀だから今の地位にいるとは言い切れないケースも少なくないと思います。
そうすると、あなたが従業員に「頑張ってくれ」と言っても、それは家業を継いだあなたの財産を増やすための言葉だと受け取られかねません。
従業員にしてみれば、「どうせ自分はこの会社の経営者にはなれない。頑張ったところで所詮創業家の財産が増えるだけだ。それならほどほどに頑張っておけばいいか」と考えるのが普通です。
一方、努力してサラリーマンとして昇進し、経営陣の仲間入りをした方の多くも同様です。経営陣に入ったからといって、「この会社をどうしていきたいのか」とか「会社経営の目的は何か」といったことを改めて考えることはそうないでしょう。大半の方が、「これまでこうやってきたのだから」と従来のやり方を踏襲して経営をされていると思います。
つまり、経営者であってもほとんどの人は、何を目的にして会社を経営していけばよいのか、ということを真剣に考えられたことがないわけです。
私は「全従業員の物心両面の幸福」を追求することは、たいへん高い次元の目的であり、大義名分のあるものだと思っています。それは、誰か個人のものではなく、集団のための目的だからです。集団の幸福を、それも物心両面の幸福を追求するために、我々は一生懸命仕事をする。私にとっては、若い社員たちの不平を治めるためにつくったものでしたが、結果として、たいへん大義名分のある目的であったと思っています。
例えば、「私がこの会社のトップになったからには、会社の目的を『全従業員の物心両面の幸福を追求する』ことに変える。私はここに集ってくれている皆さんが幸福になるよう一生懸命努力していくつもりだ」と話せば、従業員の態度はがらりと変わるでしょう。そして、苦労しているトップのあなたに対して、素晴らしい協力をしてくれるようになるはずです。(要約)
名誉会長は、京セラの経営理念について、次のように補足されています。
経営理念の対象を、「社員」ではなく「全従業員」の物心両面の幸福を追求するとしたのは、社員のみならず社長である私や、毎日、現場で懸命に作業に当たってくれているパートさんまで含めた、すべての人たちの幸福を追求しようと思ったからです。
経営者と労働者といった分け隔てをすることなく、仕事に従事する人たちすべてを従業員と位置づけ、その人たちの物心両面の幸福を追求すると決めたのです。
たいへんプリミティブな会社経営の目的ですが、このことを目的としたのは素晴らしいことだったと思っています。神様が私に与えてくださったのではないかと思うくらいです。
この目的であれば、従業員みんなが共有してれます。「あなたが目指す経営は、私たちの幸福を追求してくれるものです。それなら大賛成です」と共鳴してくれるわけです。
私はこの目的を決めてから、従業員を叱ることに負い目を感じなくなりました。「私はみんなのために粉骨砕身、朝から晩まで懸命に頑張っている。それなのに、あなたがそんな無責任なことでどうする。もっとまじめに働かんか」と堂々と言えるからです。そうした意味からも、会社の目的には大義名分が必要だと思っています。(要約)
どのような内容であれ、そこに崇高な願望や高尚な目的、大義名分といったものがあれば、自身のみならず、そこに関わる全ての人々の共感が得られ、実現に向けて進んでいくのではないでしょうか。