『稲盛和夫一日一言』 6月6日
こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 6月6日(木)は、「いい仕事をする条件 ②」です。
ポイント:いい仕事をするために必要不可欠なこと。その二つ目は、「理屈より経験を大切にすること」。理論と経験則がかみ合ってこそ、素晴らしい仕事ができるようになる。
2001年発刊の『京セラフィロソフィを語るⅠ』(稲盛和夫著 京セラ経営研究課編/非売品)「知識より体得を重視する」の項で、経験に裏打ちされたベースがあってこそ知識や理屈が生きてくるとして、稲盛名誉会長は次のように述べられています。
「知っている」ということと「できる」ということは全く別です。
例えば、セラミックを焼成するときの収縮率の予測一つをとってみても、この事実はよく分かります。文献などで得た知識に基づいて、同じ条件で焼成を行ったつもりでも、実際に得られる結果は、その都度違ってくるということがよくあります。
本のうえでの知識や理屈と実際に起こる現象とは違うのです。経験に裏打ちされた、つまり体得したことによってしか本物を得ることはできません。
このことは、営業部門であれ管理部門であれ全く同じで、こうしたベースがあってこそ、初めて知識や理論が生きてくるのです。(要約)
今日の一言には、「ものづくりでは、教科書を読むと、こうやればいいと書いてあります。理論的にはそのとおりなのですが、実際にはそう簡単ではありません。現場で実際に手を汚し、試行錯誤を繰り返してみないと分からないことのほうが多いものです」とあります。
京セラフィロソフィに「経験則を重視する」という項がありますが、その中で、知識と経験があって初めて「できる」として、名誉会長は次のように説かれています。
京セラにも、大学でいろいろな勉強をして、高度な知識を身につけた人材が毎年入社してきます。また、中途入社でも、優秀な技術者が入ってくると、すぐにその人たちの意見にしたがって仕事を進めていこうとします。彼らも、自分たちが今まで勉強してきたことを生かそうと、一生懸命に仕事に取り組んでくれるでしょう。
このような人間が得てして陥りやすいのは、「理屈さえ分かっていれば簡単にできる」と錯覚してしまうことです。ところがいざやってみると、なかなかうまくいかない。それは、理論上は「できる」はずのものでも、実際にはそう簡単にはいかないからです。
理論、理屈にしたがってやってみても、なかなか思い通りのものができない。つまり、「知っている」からといって、「できる」とは限らない。現場を知らないがために、できるはずのものさえ作ることができないわけです。
「経験則を重視する」ということは、私自身が会社で研究を行う中で痛感してきたことです。勉強して見につけた知識と、現場で実際にやってみて得た経験、この二つを合わせもって初めて「できる」と言える。そう実感したからこそ、私は現場を知ること、経験することが大切だと説いているのです。
皆さんも、理論だけでなく、ぜひ現場を理解したうえで仕事をしていただきたいと思います。(要約)
京セラに入社して早々、私も「知っている」ことと「できる」ことは別物だという現実に直面して面食らったことを思い出しました。
例えば、新しいテーマを選定しようとして、いくら専門書や先行文献を読み込んでみても、そこにはブラックボックスのような中身の見えないものが存在しているということがはっきりするだけで、一向に「できる」ような気がしてきません。
実験の一つひとつの作業をとってみても、熟練した先輩のスピードにはとてもかなわず、せめてクオリティだけは落とさないようにと、丁寧に作業をしていると、「何をちんたらやってるんだ。そんなペースでは今日中に帰れないぞ!」と怒鳴られるといったありさまでした。
そして、「知っている」ことと「できる」ことは別物だという現実は、年齢に関係なく起こることです。なぜなら、一生のうちに一人の人間が経験できることなど知れているからです。
年齢を重ねるにつれ、「自分は何でも分かっている」といった態度が目につく、謙虚さを持たない人が増えてくる傾向があるように感じます。
各々それなりの自負を持って生きてこられたのでしょうが、だからこそ、どのような経歴を持っておられようとも、またいくつになられようとも「謙虚にして驕らず、さらに努力を」という気構えが求められるのではないでしょうか。