『稲盛和夫一日一言』 4月15日
こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 4月15日(月)は、「正々堂々」です。
ポイント:正々堂々と、人間として正しいやり方を貫く。今日一日を一生懸命に生きてさえいれば、未来も運命もきっと開けてくる。
2007年発刊の『人生の王道 西郷南洲の教えに学ぶ』(稲盛和夫著 日経BP社)の中で、正しいことを正しいままに踏み行うことの大切さについて、稲盛名誉会長は次のように述べられています。
国の内政も外交も、基本となるのは正道を踏むことです。策略をもって相手を貶(おとし)めようとすれば、同じ仕打ちがこちらにも返ってきます。
力をかさに着て我(が)を通せば、人の心は離れていきます。相手の顔色をうかがい迎合ばかりしていては、決して信用は得られません。
それは、国と国との関係でも同様です。毅然とした態度で臨み、正道を踏むことによってこそ、本当の信頼関係を築くことができるのです。
西郷がいう「正道」とは、我が国にとって正しい、また自分にとって正しいということではなく、「天に恥じることのない、人間として正しい道」という意味です。
【遺訓一七条】
正道を踏み国を以て斃(たお)るるの精神なくば、外国交際は全(まった)かるべからず。彼(か)の強大に畏縮し、円滑を主として、曲げて彼の意に順従する時は、軽侮(けいぶ)を招き、好親却って破れ、終(つい)に彼に彼の制を受くるに至らん。
【訳】
正しい道を踏み、国を賭しても倒れてもやるという精神がないと、外国との交際はこれをまっとうすることはできない。外国の強大なことに恐れ、ちぢこまり、ただ円滑に事を納めることを主眼にして自国の真意を曲げてまで外国のいうままに従うならば、侮(あなど)りを受け、親しい交わりがかえって破れ、しまいには外国に制圧されるに至るであろう。
外交交渉は正道、天道を踏んで、勇気をもって交渉しなければならない。たとえ戦争になって国が倒れるかもしれないという危険性があっても、正道を推し進めて交渉事をすべきで、恐れおののいて節を曲げてはならない、外国から理不尽なことをいわれても、あくまでも道義を貫いて主張すべきは主張すればいい。西郷はこう言っているのです。
しかし現実は、政治家や官僚は何かあると、すぐに「国益」を持ち出し、それを守るために策を弄しようとします。しかも、語られている国益の実態は「国の面子(めんつ)」ぐらいの意味しかありません。
外国に侮辱されてはいけないと、体面をつくろう。これは、ばかばかしいことだと私は思います。
そのような無意味な国益を第一に考えるという発想から、日本人は脱却すべきです。
世界に冠たる経済大国としての地位を守ろうということを含め、戦後形作ってきた固定した価値観から脱して、新しい国のあり方、外交のあり方を考えるべきときだと思います。(要約)
今日の一言には、「企業経営には、権謀術数(けんぼうじゅっすう)が不可欠だと感じている人が多いかもしれませんが、そういうものは一切必要ありません」とあります。
今回紹介した遺訓一七条は、国家のあり方といった大きなスケールでの教えですが、その内容は、今日の一言である「正々堂々」と相通ずるものがあると思います。
そしてそうした姿勢は、経済活動、企業経営に限らず、私たちの生き方においても通じるものではないでしょうか。
正しいことを正しいままに行おうとすれば、どうしても困難で苦しいことに遭遇することになります。うまく世渡りしようとして、相手に迎合したり、妥協を繰り返していては、自分を自分らしく保つことは不可能です。
自分が正しいと信じる道を「正々堂々」と踏み行う。必ず報われると信じて「正道を貫き通す」という厳しい姿勢を持ち続けることが、人生を自分らしく生きていくための唯一の方法、道なのかもしれません。