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『稲盛和夫一日一言』 6月30日

 こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 6月30日(日)は、「病める現代の処方箋(しょほうせん)」です。

ポイント:欲を離れること、誠を貫くこと、人に尽くすこと。それこそが、病める現代の処方箋。

 2008年発刊の『「成功」と「失敗」の法則』(稲盛和夫著 致知出版社)の中で、「豊かさとは足るを知ること」として、稲盛名誉会長は次のように述べられています。

 いろいろと不都合な部分を差し引いても、現在の日本は「豊かな国」だと私は思うのです。現在の生活レベルまできたら、日本は「豊かな社会」に到達していると考えるべきです。

 「豊かな国」に身を置きながらも、今の日本人がその豊かさを実感できないでいるとするならば、それは日本人がそれを実感できないような貧弱な精神構造に陥ってしまっているからではないでしょうか。

 すでに手に入れた豊かさは棚に上げ、さらに他のものを求める。客観的な豊かさの基準があると信じ、自分には「まだ何かが足りていない」と常に不満を抱いている。だから「豊かさ」を実感できないでいるのです。

 本来、「豊かさ」とは個人によって感じ方が違う主観的なものであり、客観的な基準などないものです。ですから、「足るを知らない人」、あくまでも不足を感じるという人は、どんなに豊かな状態になろうともそれを感じることはできません。
 結局、「豊かさ」というのは「足るを知る人」しか実感できないものであり、「足るを知る」という精神構造があってはじめて実感できるものなのです。

 「足るを知らない」とは「利己」にとらわれているということです。「利己」、つまり「自己の欲望」は放っておけば際限なく肥大化していきます。限りなく「自己の欲望」を満足させようとする人は、自分が得か損かを判断の基準とします。そして、自己の利益を得るためには手段を選ばず、あらゆる手立てを取ろうとさえします。

 日本の社会をより素晴らしいものにしていこうとするならば、まずは日本人の心を浄化するところから始めなければなりません。
 利己にとらわれない正しい判断基準、価値観を持つことができるようになってはじめて、私たちは「足るを知る」ことができ、心から「豊かさ」を実感できるようになるのだと思います。

 一人一人の日本人が、利他の心を持ち、世のため人のために尽くそうと思い始めたとき、日本は本当に素晴らしい国になれるのではないでしょうか。(要約)

 今日の一言には、「欲を離れること、誠を貫くこと、人に尽くすこと。それこそが、人間が正しく生きていくための哲学であり、真の道徳といえる」とあります。

 同著「人間としての正しい生き方」の項で、人間として正しいことを追求することの大切さについて、名誉会長は次のように説かれています。

 現在の社会は、平然と不正が行われたり、利己的で身勝手な言動をとる人がいたりと、決して理想的なものではないかもしれません。
 しかし、世の中がどうであろうと、「人間として何が正しいか」を自らに問い、誰から見ても正しいこと、つまり、人間として普遍的に正しいことを追求し、理想を追い続けていくことが大切です。

 ところが、ある程度経営の勉強をしたり、若干でも経営の経験があるような人は、「人間として正しいかどうか」というよりは、「儲かるかどうか」を判断基準にしてしまいがちです。
 一生懸命働くというよりは、うまく妥協したり、根回しをする術を覚え、少しでも楽をしようとしたり、単に合理性や効率のみを追求しようとします。

 こうしたことは経営者に限ったことではありません。政治家や官僚などにおいても、単に優秀で博識だというだけで、また世渡りの術に長けているというだけでリーダーになったような人たちは、どうしても同じような言動をとってしまいがちです。

 そのようなリーダーがはびこる社会には、己の都合だけを考え、何をしても儲かればいいという風潮が生まれてきます。そうなると、少しぐらい不正なことをしても構わないといった人間が増え、世相は乱れて荒々しいものになっていくでしょう。

 私は、まさに現在の日本社会がそのようになっているのではないかと危惧しています。私たち一人一人が、人間として正しいことを追求するようになってはじめて社会全体のモラルが向上し、健全な社会が築かれていくのだと思うのです。(要約)

 2008年に刊行された内容ですが、未だにそのようなリーダーがはびこる社会が続いているのが現実ではないでしょうか。

 2007年発刊の『人生の王道 西郷南洲の教えに学ぶ』(稲盛和夫著 日経BP社)の中で、名誉会長が説かれている言葉を、改めて引用します。

 「人の上に立つリーダーは、私利私欲を捨てて正道を歩め」

 現在の社会は、それを構成する私たち一人一人が何らかのリーダーシップを発揮し合うことで成り立っています。
 一人一人が、私利私欲を捨て、正道を歩むのだという強い気概を持って生きていきたいものです。


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