『稲盛和夫一日一言』 9月2日
こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 9月2日(土)は、「石垣の経営」です。
ポイント:会社は城の石垣のようなもの。石垣は大きな石だけを並べても風雪には耐えられず、小さい石が間に詰まっているからがっちりと組まれる。石垣と同様、大小さまざまな事業をうまく組み上げるのが経営。
2005年発刊の『【実学・経営問答】高収益企業のつくり方』(稲盛和夫著 日本経済新聞社)の中で、「筋肉質経営を目指すが、デキの悪い社員をどうすればよいか」という盛和塾生からの質問に対して、稲盛名誉会長は次のように答えられています。
昔から「人は石垣、人は城」と言います。企業を城に見立てれば、従業員は石垣です。石垣の中には、大きな石もありますし、小さい石もあります。
頑丈な石垣には、大きな石だけではなくて、その大きな石と石の間に必ず小さな石がたくさん嵌(は)め込まれていて、この小さな石が、石垣全体を強固にする働きをしているのです。
この小さな石のように、能力はそれほどなくても人間性が素晴らしく、周りの人心をまとめ、一生懸命、会社のために尽くそうとされている方がいます。そういう人は、会社を筋肉質で経営するには無駄だと思われるかもしれませんが、決してそうではありません。そういう人を雇用しておくということは、短期的にはロスを生じさせているように見えますが、長期的に見ると組織を強固にしてくれるので、会社にとって大きな財産となるのです。
筋肉質経営というのは、必ずしもやり手の人だけを選ぶことではありません。やり手の間に、人間味あふれる素晴らしい人材がいなくては、会社は成り立たないのです。
ですから、能力はなくても真に会社のためを思い、役に立とうとする人がいたら、そういう人を大事にすることです。目先の役には立たなくても、必ず将来、素晴らしい仕事をして、みんなによい影響を与えてくれます。そう信じて間違いないと思います。(要約)
「筋肉質経営」について、1998年発刊の『稲盛和夫の実学 ー経営と会計ー 』(稲盛和夫著 日本経済新聞社)の中で次のように解説されています。
企業は永遠に発展し続けなければならない。そのためには、企業を人間の体に例えるなら、体の隅々まで血が通い、常に活性化されている引き締まった肉体を持つものにしなければならない。
つまり、経営者はぜい肉のまったくない筋肉質の企業を目指すべきなのである。私はそのことを「筋肉質の経営に徹する」と表現しているが、それは私の会計学のバックボーンにもなっている。(要約)
今日の一言には、「大きな石、小さな石を積んでいって、一つの大きな石垣をつくり上げていく。そのように、大小さまざまな事業を組み上げる。それが経営だ」とあるとして、企業におけるさまざまな事業のあり方を「石垣」に組まれている石の大きさ・役割になぞらえて解説されています。
一般に、経営分析では「収益性」「安全性」「生産性」「成長性」といった視点が不可欠だと言われていますが、個々の事業の継続可否を判定するには、現在の事業規模にフォーカスし過ぎることなく、その事業に関わるあらゆるリソース(人材、設備、資金等)の質と量、また市場競争力、潜在的に有しているであろうポテンシャルや今後の成長性、また自社周辺事業とのリンクのしやすさなどといった、さまざまな分析を行う必要があります。
経営問答の例えは「人材」で、今日の一言は「事業」であって、対象が違うのだから同様に解釈するには無理があるのでは?」と不審に思われる方もあるかもしれませんが、人格を持たない企業や事業にも、人における「人格」と同様、そこに住む、あるいは関わる人たちのすべてが投影された「社格」「事業格」といったものがあると言われています。
ここでは、経営分析などの客観的な数値だけで判断するのではなく、その事業で働いている人たちが醸し出す職場の雰囲気や風土、やる気や勢いといった数値にはできない要素まで含めて判断するのも大事なことなのではないでしょうか。
私が京セラに在籍した40年間、名誉会長以下歴代トップのもと、京セラでは長年そうした判断が繰り返されてきたように感じています。