『稲盛和夫一日一言』 6月2日
こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 6月2日(日)は、「できない理由」です。
ポイント:いくらできない理由を並び立てても、それだけでは新しい事業を達成することはできない。何もないことを前提として、目標を達成していくために必要なものをどう調達するかを考えなくてはならない。
2015年発刊の『稲盛和夫経営講演選集 第1巻 技術開発に賭ける』(稲盛和夫著 ダイヤモンド社)の中で、「できる」と信じて夢を描くことの大切さについて、稲盛名誉会長は次のように述べられています。
とかく研究開発などを行う場合、会議や打ち合わせを開いていろいろなアイデアを出し合ったりしますが、実際には「出てきたアイデアを実現させるのは難しい」という理由で没にしてしまうケースが多いものです。
しかし京セラでは、とんでもない発想であっても、何でも自由にやってよいということにしています。それは、「空想でもいい、まずは夢を描くことが必要だ」と考えているからです。
夢を描いていく場合に何が大事かというと、それは夢を描く人、およびその集団が、夢を描いて実現していこうと努力をするときに、実現する可能性があるのだと信じることです。
自分でもできもしないと思っている空想をいくら練ってみても、まったく意味がありません。とてつもなく難しいことのように見えるけれども、できる可能性があるのだということを信じていなければならないのです。
会議などで、ある人が「このようなことをやりたい」と言うと、とかくそれがいかに難しいかということを縷々(るる)述べる人がいます。そういうことを言うのはだいたい頭のいい優秀な技術屋だと、相場は決まっています。
新しいものを開発しよう、クリエイティブなことをやっていこうという場合、そうした会議の運営方式を変えなければならないと私は思っています。
理屈っぽい、ネガティブな考え方をする人というのは、会議の場ではおじゃま虫ですから、そのような人にはあまり出てもらいたくないのです。そこには、多少頭がよくないとしても、陽性で明るい人ばかり集めて、何でも言い合ってもらうことが必要なわけです。
つまり、新しいことをする場合には、最初はポジティブな考え方をする人だけを集めて、ネガティブな考え方をする人は入れないということが必要だろうと思うのです。
しかし、会議の場へ出てきて空想や夢を語っている人でも、実は自分でも実現不可能な夢だと思っているようであっては困るわけです。
創造にあたっては、仲間と一緒にチームワークを組んでやっていけば必ずできるはずだと信じていなければなりません。それが夢を実現させるための最初の条件だと思っています。
京セラフィロソフィでは、そのことを「無限の可能性を信じる」と言っています。私たちは、人間は素晴らしい潜在能力を持っていると信じています。だからこそ、いろいろなものにチャレンジできるわけです。(要約)
今日の一言には、「目標を達成するためには、何もないことを前提として、そのために必要な人材や設備、技術をどう調達するかを考えなくてはならない」とあります。
今日の一言は、昨日の『夢に酔う』の次のステップに相当するものです。
まず「こうありたい」という夢と希望を持って、超楽観的に目標を設定したとします。
その次には、「天は自分たちに無限の可能性を与えてくれている」と信じ、「必ずできる」と自らに言い聞かせ、自らを奮い立たせることが大事です。
しかし、その次の計画の段階では、「何としてもやり遂げなければならない」という強い意志をもって悲観的に構想を見つめ直し、起こり得るすべての問題を想定して、対応策を慎重に考え尽くさなければなりません。
その段階では、先ほどの会議の場では追い出されてしまうようなネガティブな考え方を持つ人が、がぜん力を発揮してくれます。
「うちにはこういう技術はない、ああいう設備もない。そもそも新しいことをやるための人材もいない」などと、次から次へとマイナス要因を列挙してもらい、それらをすべて頭に叩き込んで、その難しさを十分理解してから、改めて緻密に計画を練っていく。
何でも完璧にやれるオールマイティな人間はそうそういません。「適材適所」という言葉があるように、集団の夢や目標の実現に向けて、自分たちは今どの段階にあるのかということを正しく認識し、各々の適性を見極めながら、すべてのメンバーが生き生きと動き働ける環境、状況をつくっていくのも、リーダーの重要な役目のひとつだと、私は思っています。
新しいことにチャレンジし、それを成し遂げていくためには、各々の段階に合わせて、「楽観的に構想し、悲観的に計画し、楽観的に実行する」ということをいかに実践するかが大事なのではないでしょうか。