『稲盛和夫一日一言』5/9(火)
こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 5/9(火)は、「リーダーの資質 ①」です。
ポイント:リーダーとして一番重要な資質は、常に深く物事を考えることのできる重厚な性質を持つ人格者であること。
2004年発刊の『生き方』(稲盛和夫著 サンマーク出版)の中で、リーダーの資質について、稲盛名誉会長は次のように述べられています。
現在の日本においては、リーダー個人の資質というよりも、リーダーの選び方自体に問題があるのではないか、と私は考えています。それは私たちが、組織のリーダーを人格よりも才覚や能力を基準にして選ぶということを繰り返してきたからです。
人間性よりも能力、それも試験の結果でしか表せない学業を重視して人材配置を行ってきた。公務員試験で成績が良かった人間が、役所の要職やエリートコースに就くなどは、その代表的な例といえるでしょう。
その背景には、戦後の日本を覆い尽くしてきた経済成長至上主義があります。人格というあいまいなものよりも、才覚という、目に見える成果に直結しやすい要素を重視して自分たちのリーダーを選んできた。
道徳の崩壊、モラルの喪失が危惧されている今だからこそ、人の上に立つ者には才覚よりも人格が問われます。そして、人並みはずれた才覚の持ち主であればあるほど、才におぼれないよう、余人にはないその力が誤った方向に使われることのないようコントロールする人格が求められるのです。
それが徳です。徳というと、そこに復古的な響きを感じる人もいるかもしれませんが、人格の陶冶(とうや)に古いも新しいもないはずです。
中国明代の思想家、呂新吾(ろしんご)が著書『呻吟語(しんぎんご)』の中で、同じような趣旨のことを次のように説いています。
「深沈厚思(しんちんこうじゅう)ナルハ是レ第一等ノ資質。磊落豪雄(らいらくごうゆう)ナルハ、是レ第二等ノ資質。聡明才弁(そうめいさいべん)ナルハ、是レ第三等ノ資質」
この三つの資質は、それぞれ順に、人格、勇気、能力と言い換えることができるでしょう。つまり、リーダーとして重要な資質は、第一に人格、第二に勇気、第三に能力であると述べているわけです。
今こそ、人の上に立つリーダーには、才や弁ではなく、明確な哲学を基軸とした「深沈厚重」な人格が求められています。謙虚な気持ちと内省する心、「私」を抑制する克己心、正義を重んじる勇気、そして自分を磨き続けようとする慈悲の心・・。
一言でいえば、リーダーは「人間として正しい生き方」を心がけることのできる人でなくてはならないのです。(要約)
「人として正しい生き方を心がけましょう」などと教わるのは、小学校の道徳の授業あたりではないでしょうか。「何を今さらそんなこと・・」と笑っている大人のなかで、どれだけの大人がそうしたことを日々実践できているでしょうか。
皆さん、金曜日の夜に『ペンディングトレイン』というTVドラマが放映されているのをご存じでしょうか。
「いつも通り電車に乗っていた乗客たちは、いきなり未来の荒廃した世界にワープしてしまう。スマホもSNSも使えない世界に放り出された見ず知らずの乗客たちは、水も食料もない中という極限状態にあっても、元の世界に戻ろうと、我が身に起きた前代未聞の出来事に対して懸命に立ち向かっていく」といったストーリーです。
ドラマの中にもあらゆる局面において、さまざまなタイプのリーダーが現れてきますが、「みんなのために」という無私の心を持った人には誰もがシンパシイを感じて協力的に動いてくれるようになります。
今こそ「正しい生き方を貫く」、そうしたシンプルな規範をきちんと遵守することが、私たち一人ひとりに求められているのではないでしょうか。