メンデルスゾーン:弦楽四重奏曲 第6番 ヘ短調 作品80

00:00 I. Allegro vivace assai
07:41 II. Allegro assai
12:40 III. Adagio
20:47 IV. Finale: Allegro molto

公開者情報 Palo Alto: Musopen, 2012.
演奏者 Musopen String Quartet
著作権 Creative Commons Attribution 3.0
備考 Source: Musopen lossless files also available

フェリックス・メンデルスゾーンの弦楽四重奏曲第6番 ヘ短調 作品80は、彼の生涯で最後の弦楽四重奏曲であり、彼の姉であるファニーの死後に書かれました。この作品はメンデルスゾーンの悲しみと苦悩を反映しており、彼の作品の中でも特に感情的な深みと激しさを持っています。

1. 第1楽章 アレグロ・ヴィヴァーチッシモ:この楽章は非常に激しく、動的な音楽です。メンデルスゾーンはここで強い感情を表現しており、音楽は緊張感と急激な気分の変化に満ちています。

2. 第2楽章 アレグロ・アッサイ:こちらの楽章は、第1楽章の緊張感を引き継ぎながらも、より軽快でリズミカルな要素を取り入れています。一貫して高い技術的要求があります。

3. 第3楽章 アダージョ:この楽章は、作品全体の中で最も感情的な部分です。メンデルスゾーンはここで深い悲しみと内省を表現しており、静かで瞑想的な雰囲気があります。

4. 第4楽章 フィナーレ:アレグロ・モルト:最終楽章では、再び激しい情熱が前面に出ます。速いテンポと複雑なリズムが特徴で、作品全体を力強く締めくくっています。

全体的に、この四重奏曲はメンデルスゾーンの個人的な悲しみと苦悩を音楽に昇華させた作品として知られています。弦楽四重奏曲としての技術的な難易度が高く、演奏者には高い技術力が要求されます。また、その感情的な深さから、聴く者にも強い印象を与える作品です。

この四重奏曲は、1847年に作曲されました。特に重要なのは、この作品がメンデルスゾーンの人生の最後の年、彼の姉であるファニーの死に深く影響を受けた時期に作曲されたことです。ファニーの死はメンデルスゾーンにとって大きな打撃であり、その悲しみがこの作品に色濃く反映されています。

### 楽章別の特徴

- **第1楽章**は、非常にエネルギッシュで緊張感があります。メンデルスゾーンはここで、不安定さや動揺を表現しています。激しいテンポと複雑なリズムが特徴で、演奏者には高い技術力を要求します。

- **第2楽章**では、よりリズミカルで軽快なテーマが展開されますが、依然として緊張感は続きます。ここでもメンデルスゾーンは激しさを保ちつつ、音楽の表情を変化させています。

- **第3楽章**は、この作品の中で最も心に訴える部分とされています。メンデルスゾーンはこの楽章で深い悲しみを表現し、緩やかなテンポと哀愁を帯びたメロディがこの感情を強調しています。

- **第4楽章**は、作品全体のクライマックスとして機能します。ここでは再び激しさが増し、速いテンポと複雑なリズムパターンが特徴です。この楽章は、作品全体の感情的な張り詰めた雰囲気を力強く締めくくっています。

### 解釈と受容

この四重奏曲は、メンデルスゾーンの他の作品と比べても特に感情的な深みがあり、彼の内面の激動を音楽で表現していると考えられています。演奏者には技術的な難易度だけでなく、作品の深い感情を伝えることが求められます。

聴衆にとっても、この四重奏曲はメンデルスゾーンの音楽の中でも特に印象的な作品の一つとされています。彼の生涯の終わりに近い時期に作曲されたこの作品は、彼の芸術的な成熟と深い感情の表現を示していると広く評価されています。

### 歴史的背景と作曲の動機

この作品は、メンデルスゾーンの生涯で最も困難な時期に作曲されました。彼の大切な姉、ファニーの突然の死後間もなく作曲されたため、この四重奏曲には彼の深い悲しみが反映されています。ファニーは彼にとって重要な音楽的な影響力も持っており、彼女の死はメンデルスゾーンにとって大きな精神的な打撃でした。この作品は、彼の個人的な悲しみを音楽で表現したものとして特別な位置を占めています。

### 楽曲のスタイルと構造

- **調性と調性の扱い**: ヘ短調という調性は、メンデルスゾーンにとってこの曲の悲痛な雰囲気を表現するのに適していました。彼はこの作品を通じて、緊張感と感情的な深みを強調するために、調性の変化やハーモニーの複雑さを巧みに使っています。

- **テクスチャーと対位法**: メンデルスゾーンはこの四重奏曲で、対位法の技術を駆使しています。彼は各楽器のパートに独立性を持たせつつ、全体としての一体感を保つバランスを見事に保っています。特に、複雑なリズムと旋律の重ね合わせがこの作品の特徴の一つです。

- **感情の表現**: この四重奏曲は、メンデルスゾーンの作品の中でも特に情熱的で、感情的な深みがあります。彼は音楽を通じて、喪失と悲しみの感情を細かく描写しており、演奏者にはそれを伝えるための高度な表現力が求められます。

### 受容と影響

この四重奏曲は、メンデルスゾーンの他の作品と比較しても、独特の感情的な強さを持っていると広く認識されています。それは、彼の個人的な経験と感情が直接的に音楽に反映された結果です。この作品は、後の作曲家たちにも影響を与え、特に個人的な感情を音楽に反映させるという点で重要な先例を作りました。

この四重奏曲は、メンデルスゾーンの音楽的遺産の中でも特に重要な位置を占めており、弦楽四重奏のレパートリーとして今日でも頻繁に演奏されています。その感情的な深みと技術的な要求の高さから、この作品は聴衆にも演奏者にも大きな挑戦を与える作品です。


出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

弦楽四重奏曲第6番 ヘ短調 作品80は、フェリックス・メンデルスゾーンが1847年に作曲した最後の弦楽四重奏曲である。

概要
メンデルスゾーンが作品40の3曲以来9年ぶりとなる弦楽四重奏曲の作曲に着手したのは、1847年7月6日のことであった。作曲が進められたのは弟のパウルと共に静養に赴いた避暑地のスイスであり、完成の時期に関しては自筆譜に記載された「インターラーケン、1847年9月」との記録から推測される以上のことはわかっていない。

この曲は、メンデルスゾーンの楽曲としては例外的に悲劇的な性格を有することで知られる。これは作曲の約2か月前にあたる5月14日に姉のファニーが他界したことと関連付けて考えられている。フェリックスより4歳年長のファニーは自らも演奏や作曲を嗜むなど音楽的才能に恵まれており、弟フェリックスとは強い絆で結ばれていた人物であった。5月に指揮者の職を務めていたライプツィヒから帰郷して悲報に触れたメンデルスゾーンは、あまりの心痛に耐え兼ねて作曲することもままならなくなってしまった。彼は次のように記している。「音楽のことを考えようとしても、まず心と頭に浮かんでくるのはこの上ない喪失感と虚無感なのです。」

メンデルスゾーン自身も多忙な職務に由来する疲労の蓄積により次第に心身の衰えを見せ始めており、この状況を打破すべく訪れたのが前述のスイスであった。彼はこの地で趣味の絵画に興じるなどしていささか気力を取り戻し、この弦楽四重奏曲を含むいくつかの作品を作曲する。しかし結局これらが最後の作品群となり、10月に発作を起こして倒れたメンデルスゾーンは、11月4日に姉の後を追うように他界した。

楽譜は作曲者の死から2年半が経過した1850年5月、ライプツィヒのブライトコプフ・ウント・ヘルテル社からパート譜として出版された。翌年には総譜が出版されている。初演は1848年11月4日にヨーゼフ・ヨアヒムらによって行われた。自筆譜はポーランド、クラクフのヤゲロニア図書館(英語版)に所蔵されている。

演奏時間
約25分。 ゲヴァントハウス弦楽四重奏団による。

楽曲構成
メンデルスゾーンの他の弦楽四重奏曲と同様に4つの楽章から構成される。

第1楽章
アレグロ・ヴィヴァーチェ・アッサイ 2/2拍子 ヘ短調

ソナタ形式。門馬直美はこの楽章にベートーヴェンの『弦楽四重奏曲第11番』の影響が見られると指摘している。曲はトレモロによって奏でられる、不穏な熱を湛えた第1主題に始まる。

第2楽章
アレグロ・アッサイ 3/4拍子 ヘ短調

三部形式。暗い情熱を帯びたスケルツォ楽章である。譜例2の付点リズムに関連する主題によって開始される。

第3楽章
アダージョ 2/4拍子 変イ長調

展開部を持たないソナタ形式。本作品中唯一の長調の楽章であるが、憂いを含んだ翳りのある音楽となっている。物憂げなチェロのソロに導かれて第1ヴァイオリンが主題を奏する。

第4楽章
フィナーレ: アレグロ・モルト 2/4拍子 ヘ短調

ソナタ形式。冒頭、チェロのトレモロの伴奏の上に熱のこもった主題が提示される。

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