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自分のためにつくる ひとりおせち
ひとり暮らしを始めてから数年が経つ。
毎年自分のためにおせちをつくっている。
おせち料理が特別に好きなわけではないし、普段から手の込んだ料理をしているわけではない。即席麵やコンビニ飯にはしょっちゅうお世話になっている。
それでも毎年おせちをつくっている。
豪勢なものではない。鴨ロースや伊達巻は市販のものを切るだけである。5~6品をつくってタッパーで保管して、特番を観ながら、少しずつ食べる。
おせちをつくる理由には「長期休暇で時間的に余裕がある」とか、「三が日は近所のスーパーが閉まるから、作り置きをしていると便利」とかいった都合のよさもあるかもしれない。
でもそれだけではない。クリスマスが終わったころから、少しずつ材料を買いそろえて、下処理をし、何時間もかけて調理する。いつもにはない丁寧な時の流れが、1年間を清算するために必要なのだ。
今くらいの時期から買い物リスト考えはじめる。
普通の人参ではなく、色鮮やかな金時人参を買う。黒豆は地元の商店街の乾物屋さんまで買いに行こう。数の子はデパートで仕入れよう。
丁寧に、優しく、準備をして料理をする時間が、1年間を愛しむ大切な時間になる。
いつもはタッパーに詰めるだけだけれど、今年は盛り付けにも挑戦してみようかな。