医師の診断名(病名)は症状と必ずしも一致しない
ご覧いただきありがとうございます。
タイトルの通りですが、医師の診断名はあくまで診断であり、症状と必ずしも一致しません。
解説します。
診断名と症状
診断名は文字通り医師の診断を受け、診断結果に付いた名称です。
これは、診断基準に該当するか否かということになります。
例えば、腰が痛い患者さんにMRIを撮り、椎間板がはみ出ていれば椎間板ヘルニアの診断名がつきます。
しかし、MRIで椎間板ヘルニアの所見がみられていても、身体に出ている症状は椎間板ヘルニア由来とは限りません。
筋筋膜性腰痛や梨状筋症候群など、診断名としては付かないものの、腰痛や下肢の神経症状を誘発するものが多々存在します。
椎間板ヘルニアの診断がついていても、椎間板ヘルニア由来の症状がみられないもしくはメインではなく、その他の要因によって似た症状が引き起こされている可能性があるということです。
しかし、患者さんとしては判断がつかないため、診断名由来の症状として捉えるしかありません。
ケースによっては、医師側も画像診断のみに頼り、身体所見としての症状は軽視している可能性もあります。
特に、リハビリテーション科のない整形外科ほどその傾向は強い印象があります。
診断名とリハビリ
リハビリを行う上ではコスト算定の条件に一致する診断名が存在します。
先程の例えを整形外科クリニックを想定して挙げると、腰の診断名としては、変形性腰椎症、脊柱管狭窄症、椎間板ヘルニアなどが該当します。
では、20代の既往歴のない患者さんが腰痛を訴えて来院したとします。
この場合、年齢から変形は考えにくく除外診断となるため、リハビリが可能となる診断名は椎間板ヘルニアしかありません。
つまり、椎間板ヘルニアと診断名がついてリハビリに回ってきた患者さんが、本当に診断名通りの症状や身体所見を有するか、と考えることが必須です。
ここで、理学療法士としてのクリニカルリーズニングの力が試されます。
理学療法士のクリニカルリーズニング
詳しくはクリニカルリーズニングだけで何回もnoteを書けるほどに複雑ですので、ここでは簡単にまとめます。
医師の診断名のためのクリニカルリーズニングと異なり、理学療法士は診断名と症状や身体所見の整合性を取ることが必要です。
そして、診断名とそれらが一致しない場合、症状と身体所見から患者さんの身体に何が起きているのか推論していかなければなりません。
腰痛であれば、症状のある部位や関連領域にどんな組織があり、それらがそれぞれどのような機能を持っているかという知識から、どのような条件で特定の組織に負荷が生じるか、ということを考え、痛みを分解して捉えていくことになります。
そして、症状が誘発される身体運動中のバイオメカニクスと病態が存在すると疑われた組織の関連を精査し、治療に繋げていきます。
堅苦しい説明でしたが、解剖学、機能解剖学、生理学、運動学、運動力学などの知識を持ち、それらを組み合わせていくことで、患者さんの身体に生じている症状と身体運動の関係をかなり深く詰めて考えることが出来ます。
医師は医師としての病理診断、理学療法士は理学療法士としての機能診断といった形で組み合わせていけることが理想と考えています。
理学療法士も診断がつけられる仕事になるともっと価値が高まるのになぁ、、、と思います。