VOW WOW:奇跡は再び起きる、伝説は続く
ー 奇跡は再び起きる
ー 伝説は続く
VOW WOWという日本のハードロック界を代表するバンドがある。1990年に一度は解散したが、昨年の6月に奇跡の復活を遂げ壮絶なライブを繰り広げた。
6月の公演チケットは争奪戦となり、即時完売だった。すぐさま2025年1月に追加公演が組まれたが、これも瞬殺。私が6月公演に加えて追加公演も観ることが出来たのは幸運と言う他ない。
詳細なライブレポートは他の方が書いて下さると思うので、私はバンドのことに加え、少しだけ今回のライブの様子を交えて書いてみたいと思う。
VOW WOWにヴォーカリストの人見元基が復帰したという事実は、単に「昔聴いたあの声をまた聴ける」ということ以上の意味を持つ。それは、世界最高峰に類するヴォーカリストを擁するバンドが蘇ったということなのだ。
人見元基がどれほど凄いヴォーカリストであるかは、以前noteに書き記したので、よろしければご覧いただきたい。
今回の追加公演においても人見元基の歌唱は人智を超えていた。休憩を挟みつつも、声量・トーン・ピッチ・音程が最初から最後まで全く乱れない。
特に”Love Walks“でのあまりに凄まじい絶唱は、「いま我々は間違いなく世界一の歌唱を耳にしている」と自信と誇りを持って断言できるほどのものであった。
VOW WOWの強みは人見元基だけではない。
前身バンドのBOW WOWからバンドを牽引し続けてきたリーダー、山本恭司のギターを今日は前回以上にたっぷりと堪能できた。山本恭司は、ギター1本で変幻自在の音を紡ぎだす魔術師のようなギタリストとして若い頃から比類なき存在ではあったが、今回のライブでその音色の多彩さがさらに増えたように思った。歳を重ね、山本恭司はギターの魔術師から大魔道士にクラスチェンジしたのだ。日本のギタリストでスティーヴ・ヴァイとタメを張れるのは、山本恭司だけではないかと個人的には思う。
そしてステージ上に要塞のように多数のキーボードを構え、美しくきらびやかな音色を奏でる日本ハードロック界最強のキーボーディスト、厚見玲衣。ギターがどうしてもメインとなるハードロックの世界においてキーボードは脇役に回ることが多いが、厚見玲衣は違う。ガンガン前に音が出て、キーボードが曲の主役になることもザラにある。今回も時にショルダーキーボードを構えて要塞から飛び出て、フロアを大いに沸かせていた。そう、厚見玲衣は単なる凄腕キーボード奏者ではない。リードキーボーディストなのだ。
すなわちVOW WOWは、
ワールドクラスのリードヴォーカリスト
魔術師から大魔道士になったリードギタリスト
曲の主役にもなるリードキーボーディスト
という三人の超級リード奏者を擁する恐るべきバンドなのである。その三人の力が破綻することなく美しく均衡しているのも奇跡のようだ。
今回は6月公演(クラブチッタ川崎)よりずっと大きな会場で、照明や演出も合わせてグレードアップしていた。VOW WOWの音楽はもとよりスケールが大きいので、会場も大きめの方がよく似合う。そう、例えば日本武道館とか…。いま彼らは事務所にも所属しておらず、レコードディールもない状態なのでそれは私の期待でしかないのだが、そう期待させるに十分な力を今もVOW WOWは持っているのだ。
今回、山本恭司はMCで「僕らが再結成出来たのは…」と言った。ついに「再結成」と明確に口にしたのである。人見元基も、はにかみながら「いつになるかはまだ言えないけど、またやるよ。待っててね」と言った。
この人智を超えたバンドにはまだ先が、未来がある。ファンにとって、これほど喜ばしいことがあるだろうか。
かくて王は帰還した。
奇跡を再び起こすために。
伝説を続けるために。
了