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メタルエッセイ:カーク・ハメット(メタリカ)と木根尚登(TMN)と金八先生(3年B組)

3年B組の金八先生は、その最後の授業でこう言っていた。

「偉くならなくてもいい、感じのいい人になってください」

というわけで、とても感じのいいギタリストを二人紹介したい。

現在、この世で最も巨大なヘヴィメタルバンドであるメタリカには、カーク・ハメットというギタリストがいる。 

天才的なギタリストだが素行が悪かったデイヴ・ムステインという人物の後任として、1983年にメタリカに加入して以来40年間リードギタリストの役目を務めている。

正直、カークのリードギタリストとしての腕前は上記のデイヴ・ムステインには及ばない。メタリカというバンドの異様なまでの巨大さに比べると、ギタリストとしての評価はそれほど高くなく、近年のライブでは演奏にやや衰えも見られる。

カークより上手なギタリストは山ほどいるので、技術面の衰えを理由にした解雇劇が仮に起こったとしても決して不自然ではない。

しかしカークがバンドを解雇される気配は全く感じられない。なぜなら、カークは「バンド内の潤滑油」という重要な役割を担っているからだ。 

メタリカというバンドは、ラーズ・ウルリッヒ(ドラム)とジェイムズ・ヘットフィールド(ヴォーカル&リズムギター)によって創設され、今もこの二人がバンドを引っ張っている。
このタッグは非常に強力だが、それゆえに個性がぶつかり合い、険悪なムードになる時もある。

そんな時こそカークの出番だ。

気が優しく、いつもニコニコしていて争いを好まない。人の話をよく聴き、自分の意見を押し付けるようなこともしない。恐らくメタリカは、そんなカークがいなければとっくのとうに解散していただろう。

TMネットワークというバンドに、木根尚登というギタリストがいる。

宇都宮隆と小室哲哉という強烈な輝きを放つ二人のメンバーと比べると、いかにも地味に見える木根尚登であるが(ファンの方ごめんなさい)、彼もまたバンドを解雇されない。

テレビの音楽番組でタモさんだったかダウンタウンだったかが冗談で「きみ、何でいるの?」と木根氏に突っこみを入れた時に、間髪入れず宇都宮隆が「大事な友達なんです」、小室哲哉が「彼がいないと僕らダメなんです」と真面目な顔をして答えていたことを私は今も覚えている。

TMネットワークというユニットには、音楽うんぬんを超えたところで木根尚登の存在が絶対に必要なのだろう。当事者がそう言うのだから、間違いなくそうなのだ。

職場や学校にもそういう人、いないだろうか。
仕事や勉強はそこそこでも、その人がいると何となく人間関係がスムーズになる、みたいな。その人が異動したり転校したりしたら、場の空気が急にギスギスしてきた、みたいな。

「その人がいると人間関係が傷まない」というのは、そのグループに緩やかな自動回復魔法を常にかけ続けているようなもので、今風の言葉で言えばチート級の素晴らしい能力であると私は思っている。

そういった人の存在は黄金のように貴重であり非常に役に立っているのだが、悲しいかな組織(特に会社)というものは、そういう能力を持つ人を正当に評価する軸を持たない。

メタリカはカークを絶対に解雇しないことで、その静かで偉大な能力に応えているのかもしれない。一方、人柄が良ければそれだけでいいのか、愛嬌があればメタリカにいられるのかと言えば決してそうではないと思う。

しかし、タモさんやダウンタウンがカークに「きみ、何でいるの?」と突っ込んだら、メタリカのリーダーであるラーズとジェイムズは即座にこう答えるだろう。
「あんたら何も分かってねえな。俺等には彼が必要なんだ。カークじゃなきゃダメなんだよ」と。

仕事や勉強があんまり出来なくても、その人がいるだけで救いになることがある。

そういう人がいることに気づいたら、どうかその人を大事にしてほしいと思う。そしてもし、自分がそういう存在なのかもしれないと感じたら、どうか自分自身を誇ってほしいと願う。

金八先生も、きっとそう願っているだろうと私は信じている。

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