霧の中の灯台~第1話:帰郷と不気味な足音④
4. 消えない記憶
その夜、アリシアはほとんど眠れなかった。布団の中で目を閉じるたびに、幼い頃の記憶がよみがえる。灯台の近くで遊んでいたあの日、霧の中に消えていったレオの姿。そして、なぜかその場面で必ず現れる謎の赤い影。
「ただの疲れだよね……」
自分に言い聞かせるように呟いたものの、胸の奥底で何かがざわついている。
翌朝、村の広場に向かう途中、アリシアはふと足を止めた。昨夜母が話していた「遊びに来た子ども」について思い出したのだ。家の周りには遊べるような場所はないし、そもそもこの村では子どもの数が減少していると聞いていた。
「なんで、子どもが来るの?」
その疑問が頭を離れないまま、彼女は再び灯台の方へと足を向ける。あの場所に行けば、何かがわかるかもしれない。
しかし、灯台へ続く小道の入り口に立ったとき、胸に嫌な予感が走った。小道の先から、昨日聞いたものと同じ足音が聞こえてくるのだ。