霧の中の灯台~第3話:霧の中の囁き③
3. 村人たちの秘密
その日の午後、アリシアは再び村の広場へ向かった。何か情報を得られるかもしれないと思ったのだ。道すがら出会った村人に声をかけてみたが、誰もが灯台やレオの話題には触れたがらなかった。
しかし、広場の片隅に腰掛けていた老人だけは、彼女の質問に対して小さく頷いた。
「あの灯台のことを聞くなんて、よほどの覚悟があるんだな。」
「どういう意味ですか?」
老人はしばらく黙っていたが、やがてぽつりぽつりと語り始めた。
「あの灯台はな、ただの灯りじゃないんだ。何十年も前、ここでひどい霧が出たとき、人が何人も行方不明になった。レオ君のことも、きっと……」
「それで?」
アリシアが急かすと、老人は話を続けた。
「灯台はただの霧避けじゃない。あれは、何かを閉じ込めるためにあるんだ。あそこに触れると……帰ってこれなくなる。」
老人の言葉は迷信めいていたが、その声の震えは本気の恐怖を感じさせた。