霧の中の灯台~第5話:記憶の扉②

2. 記憶が解き放たれる瞬間

家に戻ったアリシアは、夜通し過去を振り返るようにして、灯台と霧、そしてレオの失踪について考えた。何かを思い出しそうになるたびに、頭痛が襲う。それはまるで、自分の中で記憶そのものが封じ込められているかのようだった。

彼女は机の上に広げた村の記録と灯台で見つけた日記を見つめた。そして次第に、自分が長い間避けてきた事実に気づき始めた。

あの霧の中で、私はレオを見失っただけじゃない。何かを見た。そしてそれを、記憶から閉じ込めた。

その夜、再び悪夢がアリシアを襲った。

夢の中で、彼女は8歳の自分として灯台のふもとに立っていた。霧が濃く漂い、どこからともなくレオの声が聞こえる。
「アリシア、手をつないで!」

手を伸ばした先に見えたのは、レオの姿だった。しかしその後ろには、赤い影が立っていた。その影は笑みを浮かべ、彼女に手を差し出してきた。

「お前も来い。霧の中で全てを見せてやる。」

その瞬間、夢の中の記憶が途切れる。だが、目を覚ましたアリシアはついに確信した。

「赤い影……私はあのとき、霧の中で赤い影と向き合ったんだ。」

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