霧の中の灯台~第3話:霧の中の囁き④
4. 赤い影との遭遇
その夜、アリシアは日記の言葉が頭から離れなかった。「僕はもうここにいない。でも、ここにいる。」
それがどうしてもレオの声のように思えて仕方なかった。
再び灯台へ向かうべきだと考えたアリシアは、懐中電灯を手に家を出た。風が強く、霧はますます濃くなっている。小道を進む途中、再び背後に足音が響いた。
振り向くと、今度ははっきりと見えた。霧の中に、赤い影が立っている。
「誰なの?」
声をかけるが返事はない。ただ、その影は一歩ずつ近づいてきた。そして、その姿が霧の中から現れた瞬間、アリシアの背筋は凍りついた。
それは人間ではなかった。異様に長い手足、曲がりくねった背中、そして無表情の顔。影はゆっくりとアリシアに手を伸ばしてきた。
アリシアは咄嗟に懐中電灯を向けたが、影は光を受けるとまるで霧のように消えてしまった。辺りは再び静寂に包まれたが、彼女の耳にはまだ遠くで囁く声が聞こえていた。