霧の中の灯台~第4話:地下室の囁き②
2. 幼少期の記憶の断片
家に戻ったアリシアは、母に声をかけられても反応せず、部屋に閉じこもった。ベッドに座り、頭を抱えながら何度も地下室のことを思い返す。
赤い影が言った「思い出せ」という言葉が、彼女の脳裏にこびりついて離れなかった。
そのとき、不意に幼い頃の記憶が蘇った。レオと一緒に灯台の周りで遊んでいた日々。霧の濃い日には「霧鬼」と呼ばれる伝説の怪物の話を聞かされ、ふざけてその怪物を呼び出そうとしたことさえあった。
――しかし、最後に遊んだ日の記憶だけがぼやけている。
アリシアはいつも、その日レオが霧の中に消えたという断片的な記憶しか思い出せなかった。それ以上を思い出そうとすると、頭が痛くなる。
「何かが隠されている……でも、私自身がそれを隠している?」