霧の中の灯台~第6話:霧に奪われたもの①

1. 記憶の解放

意識が薄れる中、アリシアの頭に幼い頃の記憶が次々と鮮明に浮かび上がる。

――それは、8歳のアリシアとレオが灯台のふもとで遊んでいた日だった。

「あの話知ってる?『霧鬼』が出ると、願いを叶えてくれるんだって。」
「ほんとに?」レオは目を輝かせた。「どんな願いでも?」

アリシアは少し意地悪そうに笑いながらうなずいた。
「でもね、霧鬼に会うには、何かを差し出さなきゃいけないんだって。」

2人は遊び半分で霧鬼を呼び出す真似をし始めた。何も起きるはずがないと、子ども心に信じていたのだ。だが、そのとき突然、霧が異常に濃くなり、周囲の風景が見えなくなった。

「アリシア……怖いよ。」
レオが震えた声でそう言った瞬間、霧の中に赤い影が現れた。それはどこか滑らかで不気味な動きをしながら、2人の方へと近づいてきた。

「君たちの願いは……なんだ?」

その声は低く不気味だったが、幼いアリシアはなぜか恐怖よりも好奇心が勝った。

「レオがずっと私のそばにいるようにして!」
アリシアはそう叫んでしまった。そのとき、赤い影が微笑み、レオを指さした。

「それは簡単だ。でも……代償が必要だ。」

次の瞬間、アリシアの記憶は途切れている。

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