ショートショート03 クレジット
ぼくは小さい頃、クレジット、というボタンを押すのが怖かった。これを押したら、お父さんの口座から勝手に引き落とされて、それがバレて怒られると思っていたからだ。あるとき、ちょっとしたことで怒られた、実際に何で怒られたかは今では思い出せないが、自分の意見を聞いてもらえず、喋ろうとするとゲンコツされ、それが納得いかなかったことはよく覚えている。
気持ちを晴らすためにテレビゲームをやった。けれど、イライラしているからか、いつもの難易度をクリアできなかった。設定画面で難易度を変更しようとしたとき、クレジットの文字が見え、父親の顔を思い出し、それで押してやった。
画面にたくさんの英語が出てきて、ドキッとした。よく見ればそれが名前の表記だとはわかったが、いきなり現れたたくさんの英語に、これはまずいことをしてしまったんじゃないかと思った。さらに自分の苗字も出てきて、これはやっぱりまずいんじゃないかと焦った。
そこにお父さんが通った。先程のことを謝るのかと思ったら、「おーゲームクリアしたんか」と言う。聞けば、これは映画の終わりにその映画に出ていた人が表示されるアレと同じだという。でも同じ名前が出てきたと返すと、馬鹿野郎同じ苗字が何人いると思ってるんだと笑われた。そのときの恥ずかしさもやけに鮮明に記憶に残っている。
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