World Coffee Research 新5ヵ年戦略③
こんにちは、ROUTEMAP COFFEE ROASTERSです。
前回の続きになりますが、今回のテーマではWorld Coffee Researchが公表した『新5ヵ年戦略』の内容を噛み砕きながら解説する内容となっております。
こちらの記事では、
について詳しく解説しています。
ホームページで掲載されている資料と併せて読む方がおすすめですので、ダウンロードされていない方はこちらからどうぞ。
6)コーヒー生産国の多様性保全
6-1)国と農家にとっての生産国多様性
コーヒー生産各国の多様性を保全していくことは、品種の遺伝研究や農業システム、そして世界経済において、あらゆる課題に対応する力をもたらします。
そのためには、まず農業イノベーションを加速させることにより、複数の生産地で高品質なコーヒーの安定供給を確保していかなくてはなりません。
このプロセスには、コーヒーの農家、企業、生産国に利益をもたらし、消費者の関心を高める狙いがあります。
そのためには、各国で農業分野の研究・開発を推し進めていくことが必要不可欠なのです。
実際、研究を進めるだけでは産地の多様性を保持することはまだまだ難しいですが、それでもコーヒーの生産(輸出)国が研究開発なしに、持続可能な生産システムを達成し、国が農業作物としての競争力を維持していくことは非常に困難です。
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コーヒーの生産・輸出が国にもたらす経済的利益は、非常に大きいものとして認識されています。
ホンジュラス、ニカラグア、ウガンダ、エチオピア、ブルンジなどの国では、コーヒーの輸出額が輸出総額のうち約16~33%を占めています。
コーヒーの輸出によって得た収益は、学校から道路、病院の建物まで、あらゆるものの資金として提供されます。
さらに、農村部から港湾都市、農園、精選工場、倉庫、港湾に至るまで、国の経済全体に広がっていきます。
つまり、コーヒーが輸出収入の大きな割合を占めている国は、その地域で働く国民の生活ほぼ全てに貢献していることを示しています。
しかし、国がコーヒー部門の農業研究やイノベーションに再投資を行わなければ、やがてコーヒー部門は衰退していき、最終的には他の農業経済部門、または他のコーヒー生産国から遅れを取ることになってしまいます。
やがて世界のコーヒーの生産割合が一部の国に集中すると、農業の生産性、収益性、品質の向上によって受けるメリットが一部の少数農家にのみ集約されてしまい、輸出収入から得られる利益の配分が制限されてしまうのです。
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あらゆる農作物を育てる農家のなかでも、その貢献度合いから、特にコーヒー農家の成功が国の経済競争力を支えていきます。
生産国の強化には、活気に満ちた、収益性の高いコーヒー生産者コミュニティを構築することが必要となります。
農家の収益性を維持・向上させることは、多様なコーヒー生産地の存続に必要なことです。
したがって、新しく導入される技術は農家にとって適切なものでなければならず、かつ気候変動の現実に対応したものでなければならないのです。
6-2)コーヒーの品質のための生産国多様性
コーヒーの品質は、どの市場の部門(業務用コモディティ、プレミアム、スペシャルティ)に関係なく、コーヒーのビジネスの大きな牽引力(=販売を促すために必要な要因)となります。
このことにおいて、ほとんどのコーヒー焙煎業者は、『一貫性』と『差別化』という2つの要素の組み合わせをコーヒーの生産に必要としています。
例えば、限られた少数の生産国が世界のコーヒー流通量の大部分を占める場合、そこには生産国(地域)ごとの多様性が失われており、コーヒー市場における『一貫性』と『差別化』の効力は十分に発揮されません。
そのためコーヒー飲用者(愛好家)が求め、コーヒー事業者が拠り所とするユニークかつ独特のフレーバーをもつコーヒーを入手することは、一層困難となります。
World Coffee Researchが行った2020年の世界的なステークホルダーとの協議会によると、焙煎業者と生産者の間では、「どの部門の市場であるかに関わらず、コーヒーの品質と一貫性が世界的に低下していることに大きな不安がある」ということが明らかになっています。
6-3)リスクマネジメントにとっての生産国多様性
また同様に、生産多様性が失われ、少数の国が世界のコーヒー流通量の大部分を占める場合、コーヒーの安定した供給に対して以下のような重大なリスクが生じるでしょう。
リスク①)社会混乱によるリスク
COVID-19の感染拡大により、流通網や販売機会の喪失など、社会混乱というリスクに対する世界のコーヒーバリューストリームの脆弱性がこれまで以上に鮮明になった。
リスク②)天候のリスク
干ばつが収穫に与える影響、洪水被害が道路やインフラに与える影響、熱帯低気圧が通商ルートに与える影響など。
これらのリスクは国レベルで見ると、差別化されていないコモディティコーヒーもユニークなシングルオリジンコーヒーも同程度にさらされており、気候変動危機によって年々増幅されています。
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生産多様性は対応力のあるコーヒー農業のシステムとして認識されます。
すでに多くの買い手が強く認識しているように、複数の地域でコーヒー生豆の供給源を確保することは、サプライチェーン分断・途絶などのリスクに対処するための重要な手段となります。
しかし、特に効率性の高い生産国・農家は、他の生産者が赤字に陥る中で利益を上げることができ、その優位性をさらに強めていけます。
つまり多くのコーヒー輸出国にとって、市場競争力の維持がますます困難になってきているのです。
例えば平均収穫量ごとに生じる格差においては、ブラジルやベトナムのように1haあたりの生産量が平均1.5〜2tと高効率なコーヒー生産国と、1haあたりの平均収穫量が0.5tの世界のほとんどのコーヒー生産国との格差は拡大しつつあります。
この平均収穫量0.5tのコーヒー生産国には、ケニアやエルサルバドル、コスタリカなど、高品質なコーヒーを生産することで有名な多くの国も含まれており、今日もまた深刻な脅威にさらされています。
7)WCRと11の戦略的重点国
7-1)WCRと地理的状況
WCRの戦略には、生産、品質および農家の収益性が大幅に向上する見込みがある生産地域において、より高度な取り組みを行うという概念が取り入れられています。
これは、単に地理的な判断で地域を特定するのではなく、WCRの掲げる目標に合致し、農家がイノベーションを利用できるようにするメカニズムを確立しているパートナーを明確にすることを意味します。
つまり今後、コーヒー産業の強化を国家の公約として掲げ、それを可能にする環境を整え、新技術やイノベーションを農家に届ける明確な道筋がある国を優先することを示しているのです。
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的を絞った研究活動では、以下の条件に当てはまる戦略的対象に位置する国に焦点が当てられます。
これらの条件は、他の地域を置き去りにするということを意味しているのではなく、むしろ一部の国において、より高度な取り組みを行った上で、技術や情報を共有する意図が含まれています。
7-2)『重点国』と『戦略的パートナー』
生産多様性のある各国の競争力を支えるため、WCRは本戦略を通じて、いくつかのコーヒー生産重点国を対象とする農業研究開発の強化を支援しています。
ここで取り上げられている『重点国』と『戦略的パートナー』のそれぞれの認識について、WCRは区別をしています。
7-3)11の重点国
WCRは、特定された11の重点対象国において、研究機関から改良・普及機関、輸出業者、苗木業者などのその他のビジネスに至るまで、バリューストリームに沿ってより強力で親密なパートナーシップを構築しています。
中米5ヵ国(メキシコ、グアテマラ、ホンジュラス、ニカラグア、ペルー)
アジア3ヵ国(インド、インドネシア、パプアニューギニア)
東アフリカ3ヵ国(ウガンダ、ケニア、エチオピア)
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対象各国には、世界のコーヒー農家のおよそ半数以上が住んでおり、世界総輸出量の30%以上を占めています。
また戦略における対象基準として、11の重点国はWCRとの提携(共同投資を含む)への意欲と関心、およびその競争力を示す主要指標、輸出量、輸出額全体に占めるコーヒー輸出額の割合、農業GDP成長率、全部門生産性成長率、研究集約度などに基づいて選定されています。
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これら重点国において、WCRは以下の取り組みを実践していきます。
特にWCRとしては、これらの取り組みを行なった上で、サプライチェーン全体で研究投資資金を統合・調整し、研究活動の効率性と補完性を向上させることを目指しています。
また、主要な資金提供者(開発協力提供者など)と協力し、より深い領域で行われる研究へと投資を促します。これらの活動により、公共的な投資がコーヒー部門に行われ、長期的なバックアップとなるように貢献していきます。
7-4)グローバルリーダーシップと能力強化
WCRの役割としては、重点国や主要な戦略的パートナーとともに投資資金を調整する一方で、グローバルな見通しを明確にし、その展望を維持していかなくてはなりません。
そのためには、コーヒー部門の気候変動緩和対策における知識やデータのギャップへの対処、また研究開発議題が解決の一助となるような共通事項を取りまとめ、そうした問題への関心を高めていくなど、何よりもまず世界の生産の安定性と品質を高めるための世界的戦略を推進をしていきます。
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また、コーヒー関連の世界の科学分野のコミュニティと連携し、共同研究の新たな機会の創出とネットワーク作りも目指します。
これらのネットワークやプラットフォームは、すべての生産国が情報や専門知識にアクセスできるようになっています。
つまり、WCR自身がまず知見を得て学習を重ねることで、戦略における重点国以外の生産国に向けて、より広範な研究コミュニティがこれらを利用できるようにしていく狙いがあります。
重点対象国ではない国(政府)がコーヒー産業を発展させたいと考え、WCRが組み立てた既存のプログラムと整合性がある場合、WCRが研究コミュニティから得た専門知識を利用し、研究開発の能力を強化することが可能となるのです。
技術的な情報共有やベストプラクティスを通じて研究のコミュニティをさらに強化し、複数のステークホルダーが連携してコーヒーセクターを発展させることに繋がっていくのです。
④へ続きます。
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