道悪の勝ちポジは1番前
ピッチ走法を活かして、スムーズに先頭に立ったレイパパレが、前半1000m59秒8、後半が61秒8というペースを刻んでそのまま逃げ切った。ラスト1ハロンはバテた分、時計が掛かってはいるが、全体としては平均ペース。ペースよりも道悪の巧拙がレース結果に大きな影響を与えた。
レイパパレの最大の勝因は逃げたこと。もちろん、この馬の卓越したスピード能力と秘めたるパワー、そして底知れぬスタミナが合わさっての大金星であるが、4馬身もの差がついたのは、自身が道悪を苦にしないことに加え、後続の有力馬たちの末脚が削がれてしまったことに尽きる。
道悪馬場の勝ちポジは1番前。レイパパレのポテンシャルの高さや調子の良さ、走法、道中のポジション、他の有力馬の不調など様々な要因が重なっての見事な逃げ切り勝ち。まだ負けていないという事実も重いが、マークされる立場になるこれからこそレイパパレの真価が問われる。
川田将雅騎手はレイパパレの行く気に任せて先頭に立ち、道中はリズム良く走らせ、最後は馬場の良い外側に出し、勝利に導いた。「この馬が力まない程度に走った結果がその時計(1000m59秒8)でした」とインタビューに答える姿にトップジョッキーの矜持を感じたのは私だけだろうか。
道中のラップや時計なんかはどうでも良くて、大切なのは馬のリズムなんだよ。後づけで競馬ファンが数字を語って楽しむのは勝手だけどね、というのが本音だろう。たまたまそういう数字になっただけで、当たり前だがそこにはジョッキーの意図や馬の意思はない。
モズベッロも道悪を苦にすることなく、スタミナの豊富さを生かして、ゴール前ではコントレイルやグランアレグリアさえを抜かしてみせた。この馬は重馬場のスタミナ勝負にはめっぽう強い。悪い意味ではなく、この馬が2着に入ったことが今回の馬場やレースの特殊性を表している。
圧倒的な1番人気に推されたコントレイルは、手応え良く上がって行ったが、最後の直線では脚が上がってしまった。今回のような馬場が得意でないのはその通りだが、デアリングタクトがそうであったように、連勝が止まったあとの1戦で完調ではなかったことも敗因のひとつであろう。
コントレイルもデアリングタクトも2歳時から1年にわたって無敗のままプレッシャーを抱えながら走り続け、心身共に限界まで達していたことだろう。それが一旦途切れたのだから、ガタっと来て当然。そこから再度つくり直しての初戦だから、負けて良しの1戦と考えてよい。
負けはしたものの、コントレイルは+16kgと馬体を成長させ、心身共にリフレッシュされていて好感が持てた。今回はただ完成途上であっただけ。全馬の条件が同じ重馬場を敗因にしてはいけない。次走以降は強さを見せてくれるはずで、もう敗北は許されないレベルの名馬である。
グランアレグリアは重馬場のおかげか折り合いはついたが、スタミナを問われるレースになってしまい、距離延長の今回はさすがに苦しかった。仕上がりは悪くなかったし、決して2000mの距離がこなせない馬ではない。今回の敗戦であきらめることなく2000m戦にも挑戦してもらいたい。
サリオスはスムーズに先行できたが、最後の直線に向く頃にはスタミナ切れを起こしてしまった。跳びの大きな同馬にとっては、時計勝負になるようなパンパンの良馬場の方が走りやすい。古馬になって期待していたほどの大きな肉体的成長は感じられなかった。