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ポジションが全て

勝利ジョッキーインタビューにて、福永祐一騎手が何度も繰り返し言っていたように、道中のポジションが全てであった。気難しい面のあるカフェファラオだからということのみならず、他の出走メンバーであったとしても、外の3、4番手がフェブラリーステークスを勝つためのポジションである。スタートしてから第1コーナーまでの間、意識的に勝ちポジを取りに行けたかどうかが勝敗を分けたとも言える。カフェファラオと福永祐一騎手だけは外を目指し、それ以外の馬とジョッキーは内ラチを向いていたのだ。

東京競馬場のダート1600mコースは、スタート直後に80mほど芝コースを走る。ポケット地点からの発走となるため、外枠からスタートした馬たちの方が、内からスタートした馬たちよりも少しだけ長く芝部分を走ることができ、その分スピードにも乗りやすい。そして何よりも、スピードに乗った馬たちが外から被せてくるようにして第1コーナーに突入し、そのままコーナーを回りながら直線に向くため、内に入った馬は外から寄られるような形になり非常に乗りづらい。もう少し前にポジションしたいと思っても、前が詰まったり、窮屈になることで、馬を下げざるを得ないこともある。

標準的な馬場であれば、オープンクラスだとマイルで1分35秒台での決着となる。これくらいの馬場状態だと、ダート戦といっても芝のレースでも通用するようなスピードがないと勝負にならず、さらにG1レースともなると、前に行った馬たちも簡単には止まってくれない。後ろから行った馬は差しても届かない。もちろん、スピードに任せて先行するだけではなく、府中の長い直線を我慢できるだけのスタミナもなければならない。

フェブラリーSを勝つためのポジションを象徴するレースとしては、2009年のそれを挙げたい。前年の覇者ヴァーミリアンや前年のジャパンカップダートを勝ったカネヒキリが人気に推されていたが、激しい先行争いの中から最後に抜け出したのは、外枠から発走して馬群の外3、4番手を走ったサクセスブロッケンであった。ヴァーミリアンは前年に外枠から発走したときのように流れに乗れず、内枠を引いてしまったカネヒキリは窮屈なレースを強いられ、勝負所でポジションを上げることができなかったことが致命傷となった。サクセスブロッケンの力が抜けていたから勝ったわけではなく、勝つためのポジションを走られたことが勝因となった。つまり、フェブラリーSにおいては、外枠から発走し、外の3、4番手のポジションを走ることができる馬が圧倒的に有利になるのだ。

福永祐一騎手に計算通りに導かれたカフェファラオは、最後の直線でグッと抜け出すと、2馬身以上の差をつける圧勝を遂げた。気持ちで走る面があり、前3走に関しては力負けではなく、明らかに昨年のフェブラリーステークスを勝ったことによる精神的な疲れが癒えていなかったことが主な敗因であろう。実は昨年のフェブラリーステークスは苦しいポジションで厳しいレースを強いられたのにもかかわらず、カフェファラオの気持ちの強さだけで勝利したのだが、さすがに反動が出てしまっていたということだ。精神面を立て直した陣営の手腕はさすがだし、昨年よりもスムーズに立ち回って、今年は無理のない完勝であった。肉体的なポテンシャルは相当なものがあるため、古馬になって精神的に成長を遂げたなら国内では敵なし状態を保てるようになるのではないか。

テイエムサウスダンは前走の根岸ステークスとは打って変わって、途中から先頭に立って押し切る競馬を試みた。勝ち馬は強かったが、結果的にはベストの選択で力を出し切った。ガッチリと抑えてもそれほど切れるわけではなく、番手で止めようとして喧嘩をするぐらいならば思い切ってハナまで行かせてしまおうという岩田康誠騎手の好判断であった。久しぶりに福永祐一騎手と岩田康誠騎手のワンツーが見られて嬉しい。

3着に粘り込んだソダシは、堂々とした立ち回りで、ダート転向2戦目ですでにアジャストしてきた。道中は砂を被ることが少ない最高のポジションを走れていたが、惜しむらくは、途中からテイエムサウスダンに外から捲られたときにハミをグッと噛んでしまったことだ。あのシーンでわずかにスタミナを失ってしまったことが最後の伸びに響いた。それでも1分34秒3の時計で走り切ったのだから、今後はマイル戦を中心とした芝ダート問わないG1レースに出走して活躍できるだろう。どちらかというと、古馬になってパワー色が強くなってきているので、芝よりもダートの方が合っているのではないか。

押し出された形で1番人気になったレッドルゼルは、好スタートしたもののやや前進気勢に欠け、走りたかったであろうポジションをカフェファラオに取られてしまい、終始、馬群の中に入って競馬をせざるをえなくなってしまった。なかなか外に持ち出すことができずに最後の直線を迎えてしまい、追い出してからも伸びを欠いた。1ハロンの距離延長が川田将雅騎手を慎重にさせたのか分からないが、個人的にはもう少し出して行って、勝ち馬が走ったポジションを積極的に狙ってもらいたかった。3度目の正直を目論んだアルクトスも同様に、勝ちポジを走ることができず、不完全燃焼の7着に終わった。

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