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ドイツ顔のドイツ産馬

逃げると思われたバスラットレオンが落馬し、外からピクシーナイトがハナに立った。前半マイルが45秒3、後半が46秒3というG1としては平均的な引き締まった流れ。実力が素直に反映されやすいレースとなった。勝ったシュネルマイスターは中団から脚を伸ばしてギリギリ届いた。

シュネルマイスターはひと叩きされて今回は完璧な仕上がり。前走で中距離を使ったことが吉と出て、直線の坂でもバテることなく最後まで伸び切ってみせた。父はマイラーのキングマン、母系にはドイツの重厚な血が流れる、ドイツ顔のドイツ産馬。王道の配合が見事にはまった。

C・ルメール騎手の凄さは、大舞台でも常に冷静に乗れるところ。今回も最後の直線に向いても前の馬(ソングライン)の手応えを把握し、ひと呼吸おいてゴーサインを出し、最後の最後ギリギリのところで左ムチを打った。最後にムチを抜く者が勝者になるのを知っているのだ。

ソングラインはグレナディアガーズを前に見る形で進み、捕まえて、勝ったと思った瞬間に脚元をすくわれた。ゴール前では左にヨレてしまったが、それだけ力を出し切ったということ。前走は大きな不利があっただけに、これが同馬の実力だろう。走るキズナ産駒らしい好馬体。

1番人気に推されたグレナディアガーズは前進気勢が強く、第4コーナーでは手応え抜群だが府中のマイル戦は少し長かった。スタミナがないということではなく、馬の走るリズム的に少し長かった。上位を占めたサンデーレーシングの3頭の中では最も目標になった分、苦しかった。

リッケンバッカーは内で脚を溜め、最後の直線に賭けた横山武史騎手の大胆な騎乗が吉と出た。惜しかったのは6着のタイムトゥヘヴンで、ここぞというタイミングで前が閉じてしまいブレーキを掛けざるを得なかった。あれがなければ3着まであったかもしれない。アンラッキー。

バスラットレオンの落馬の原因は分からないが、ただ単につまづいただけに見える。これも競馬であり、競馬の恐ろしさである。誰一人として、このような結末を予想しなかっただろう。関係者の方々の無念は察するに余りある。でも馬が健康であれば、またチャンスはやってくる。


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