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「エプソム、ダービーの行進」

ラウル・デュフィという画家をご存知だろうか?ゴッホとかピカソは知っていても、ラウル・デュフィを知っている方は少ないと思う(この絵を観るまで、もちろん私も知らなかった)。ラウル・デュフィは北フランスの港町で生まれ、フランスで活躍した、フランス人にとって正真正銘の自国が誇るアーティストなのである。というのも、同じ時代にフランス画壇で活躍した画家たちが、ゴッホ(オランダ)、ピカソ(スペイン)、シャガール(ロシア)、フジタ(日本)と、なぜか異邦人が多かったからである。

デュフィが好んで描いたモチーフのひとつが競馬場であった。実はデュフィが最初に競馬場を訪れたのは、女性のファッションを研究するためだったそうだ。当時、競馬場には、最新のファッションを身に纏った淑女たちが溢れていた。が、しかし、デュフィの心はいつの間にか競馬に奪われてしまい、それ以来、競馬場に足繁く通うようになったそうである。このエピソードを聞いて以来、私はラウル・デュフィという画家に妙な親近感を感じ、彼の作品を好きになってしまった。

この作品ではエプソム競馬場が描かれていて、画面右下の円形の標識がゴール地点となり、スタジアムの前を、競走馬たちがスタート地点へ向けて行進している。競馬場の華やかさと広大さ、そして生きる喜びが、明るく洗練された色彩で見事に描かれていると思う。デュフィは「色彩の魔術師」と呼ばれていたが、この「エプソム、ダービーの行進」はまさにデュフィの真骨頂と言ってよい。この絵を観るたびに、いつの日かエプソム競馬場へThe Derbyを観に行きたいなあと思ってしまうのだ。



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