文豪とアルケミスト~審判ノ歯車 フォント考察(1)
文豪とアルケミスト、略して文アル、そのアニメがこの4月にようやく始まりました。
原作はDMMによるブラウザゲームで、明治~昭和時代の文豪たちを転生させて、文学作品を消そうとする「浸食者」たちを戦う内容です。まあ端的にいえば艦と刀剣の文豪バージョン、といったところですか…
思えば文アルとの付き合いも長くなったものです。
文学作品や書籍は書体と切り離せないものです。文アルはゲームとその関連書籍でもかなり凝った書体の使い方をしていて、書体好き、その中でも(筑紫書体ひいきの)明朝体好きとしてはとても嬉しいのです。
今回の文アルのアニメ、特にそのオープニングも大量の(!)テキストが出ており、味わい深い、「文豪」のタイトルに負けない出来上がりとなりました。
では、オープニング等で使われいている書体を見ていきたいと思います。スクリーンショットはニコ動から。画像の解像度が思わしくないので、漏れや間違いはあります。その場合はどしどしご指摘ください。
またキャラクター(文豪)の名前は略称で呼ぶ箇所があります。一応作家本人ではないので…苦手な方はご注意ください。
タイトルロゴ。「文豪とアルケミスト」はゲームのものをそのまま用いてます。これは筑紫Bオールド明朝です。「と」が特徴的です。
そして下方のサブタイトル、「審判ノ歯車」は解ミン 月。隷書の要素を取り入れた一風変わった明朝体です。
さらにここの背景には芥川龍之介「藪の中」より抜粋したものが写っています。ここは恐らく秀英明朝と築地体前期五号仮名の混植。長い歴史を持つ二つの書体で、古い書籍の雰囲気を見事に再現しています。
秀英明朝は全体的に字面が大きいです。そしてこの「滲」の、極端に横に倒れこんでいるはらいは非常に特徴的。
オープニングのクレジット表記全体はリュウミンです。
自分の中でリュウミンは少々無機質なイメージがありますが、こうして改めて見ると意外と温かみのある書体ですね。さすが優等生。
ちなみにエンディングもリュウミンです。
さて次。
禍々しく浮かび上がる「消失」の文字、そして不敵に「戦闘開始」。ここでは複数の明朝体が使われています。
「消失」の後ろに浮かび上がる文字は、凸版文久見出し明朝。
後方のテキストにしれっと「神風動画」の文字が。遊んでますね。
肝心の「消失」と「戦闘開始」は秀英初号明朝。
さて、話題となった怒涛のテキストゾーンです。ここは映像としてもすごいのでぜひ観てみてください。
たがわ先生のパート。秀英明朝・秀英角ゴシック銀・エムニュースエムの三本をメインに、凸版文久明朝と筑紫B丸ゴシックを添えています。このオープニング全体では秀英体が多用されていますね。
「人生は地獄より地獄的である」はまさか明朝体とゴシック体両方の併用。どちらもあまり自信はありません、特に「人生」の二文字だけで特定するのは…なんとなくそれっぽいのと、他のところでも使用されていることから、暫定として秀英角ゴシック銀としました。
次に北原組。二魂一体。肝心の白秋本人は出ないのかえ…?
ここのメインは手書き風書体と楷書体です。目玉はやはり小琴 遊かなでしょう。2019年に発表された、モリサワの新書体で、非常に特徴的です。一言でいうと…ザ・手書きですね。特に仮名においては、墨溜まりの再現は見事です。
画面が切り替えてはるお先生のパート。1話で出た時はびっくりしましたよ…
ちなみにこのあとは未完です。
明朝体が中心となり、雰囲気はたがわ先生パートと近いですね。右側のすずむしがいいアクセントとなっています。
追記:中央右下の明朝はやっぱりリュウミンだと思います。ウェイトは悩みますが、たぶんEH。
さて、いかがでしたでしょうか。
解像度の原因で、どうしてもわからない文字がやはりあって、そこに関してはご容赦ください。また、オープニング映像はこの続きも残っていますので、引き続き考察していこうと思います。