明暗を分けた『Ghost of Tsushima』と『Assassin's Creed Shadows』。日本人ではない主人公のゲームは何故こうも批判に晒されるのか?
最近のゲームニュースを追っていると、二つの作品(『Ghost of Tsushima』、『Assassin's Creed Shadows』)に嫌でも目が留まります。
それぞれのゲームを説明しておきますが、まずは『Ghost of Tsushima(以下:ツシマ)』から。
そして『Assassin's Creed Shadows』はこんな感じです。
『Assassin's Creed Shadows(以下:アサクリ)』はトレーラーの発表後に海外で大炎上を起こし、今でもSNSでは議論が続いている状態です。
炎上の原因は「黒人が主人公」だから。
ここで誤解を生んでいるのは、アサクリの主人公は黒人の侍である『弥助』ではなく忍者の『奈緒江』なんですが、どうしても目立ってしまうのは弥助みたいですね。
そして炎上騒ぎとなっている原因は以下で説明されています。
海外ドラマ『Shogun(将軍)』の影響力
ポストの続きの内容でチラッと出ましたが、海外で社会現象にまでなっているドラマ『Shogun(将軍)』の存在は大きいと思います。
動画のタイトルで「真田広之とハリウッドが”日本の魂”を本気で描いた」とあるように、ハリウッド映画でよくある「なんちゃって日本」ではなく、歴史考証に力を入れた作品として絶賛されました。
そして、今年のエミー賞を獲るのは間違いないとまで言われており、歴史に名を刻む作品として人々に記憶されることでしょう。
そんな背景もあり、「歴史考証の雑な作品を認めない」という風潮が、海外でも広がりつつあります。
30年前くらいなら誤魔化すことはできたかもしれませんが、今やネット社会で情報も豊富ですし、冗談抜きに日本人よりも日本文化に詳しいコアなファンがいます。
そんな中でタイミング悪く発表されたのがアサクリであり、しかも今のゲーム市場はポリコレ批判が凄まじいため、黒人侍に批判が集中しているというワケです。
やたらポリコレ要素を含ませたディズニー作品が業績を落としたように、ゲームにまでその風潮を持ち込むなと、ゲーマーの間で躍起になっている状態なんですね(そのディズニーが『Shogun(将軍)』と独占配信契約を結んでいるという皮肉)。
二つの作品の歴史考証について
話を戻しますが、ではアサクリと比べてツシマが歴史考証をしっかりしているかと言うと、正直なところ「う~ん」という感じではあります。
ツシマのデベロッパーである『Sucker Punch Productions』の社員が、日本の対馬を視察に訪れたという記録もありますが、少しの期間で日本文化をすべて学ぶというのは難しいはずです。
しかも元寇が起きた鎌倉時代ですからねぇ……日本でも大河ドラマは戦国時代と幕末に集中していますから、ツシマが開発中と聞いた時は「ずいぶんとレアな時代を選んだな」と思ったものです。
一方でアサクリの弥助は実在の人物ですが、彼が正式な侍だったかと言うと「う~ん」という感じですね。
弥助は日本の漫画やゲームでも度々登場するほどの人気キャラなので、デベロッパーであるUBIソフトも「黒人が侍とかアイデアとして面白いしまぁええやろ」みたいな雰囲気で起用したのかもしれませんが、結果は大炎上からの株価暴落という憂き目に遭いました。
良い悪いは別として、ゲーム業界が政治的な意味で複雑になっている証拠だと思います。
炎上騒動になったアサクリは売れるのか?
アサクリは人気のあるシリーズ作品なので、今回の炎上をあまり気にしていない方は普通に買ってプレイすると思います。
「日本人の主人公ではないことが人種差別」という意見もありますが、『Shogun(将軍)』も主役である三浦按針(ウィリアム・アダムス)から見た異文化の日本という物語で成功してますから、UBIソフトもその流れに乗った感じではあります。
それに先にも述べた通り、今回の主人公は忍者の奈緒江ですし……。
ここまで炎上すると、さすがに何かしらの対応が必要になるため、おそらく弥助は「準主役」であることを強調する方向へと変わりそうですね。
発表されたトレーラーは、弥助が主人公かと思わせるくらい前に出ているので、侍よりも忍者の役割に焦点を置いた方が良さそうです。
タイトルに「アサシン(暗殺者)」と付いてるから、どう考えても侍より忍者を主役にしなきゃダメでしょ……と声を大にして言いたいですわ。