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おやじパンクス、恋をする。#225
面倒臭えやつに当たっちまったと思いつつ、俺は「悪かった、急いででよ」と素直に謝った。
こんな時にレクチャーでもねえが、おっかねえ相手に謝る時には一ミリも笑顔になったらいけねえ。舐めてんのかよとぶん殴られるのがオチだ。
だから俺は完全な真顔で、誠意を込めて謝ったんだが(何しろ悪いのは俺だ)、気合の入った兄ちゃんは眉間にシワを寄せて変な顔をした。
「あれ? お前、あん時の……」
目を見開いて、今度はどう見ても笑顔に近い表情となったそいつだったが、目だけは全く笑っていない。
何だ? あん時? 俺はこんな奴知らねえぞ。
「よお、このモヒカン、ほら、こないだの葬式で……」奥に居たこれまた修羅場をたくさんくぐってきたって感じのデブに声をかける。葬式? 葬式つったら……
「あーこの野郎、またかよ。ムカつく野郎だな」
そのデブがオールバック野郎よりさらにとんがった感じで俺の前まで歩み出て、もうどんな鈍感力を持った人間でもこいつは俺に相当怒ってるってのが分かるメンチを切った。
俺は理解した。二人の顔は記憶にないが、多分こいつら、梶さんの葬式の時、佐島さんの後ろで控えていた「若い衆」なんだ。
「いやほんと、悪かったよ。勘弁してくれ」
「何だとこの野郎、舐めやがって、ブチ殺すぞ」
この小説について
千葉市でBARを経営する40代でモヒカン頭の「俺」と、20年来のつきあいであるおっさんパンクバンドのメンバーたちが織りなす、ゆるゆるパンクス小説です。目次はコチラ。